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chapter.5-3
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――糞ったれ、お前の悪癖だ。分かんねえ事をいつまでも悩む。
昔、突飛な質問をした自分に返ってきた説教を思い出した。
彼は常の口調で、けれど至極丁寧に、どうでもいい恋愛相談に長く話してくれた。
――考えて駄目なら直感で動け、立ち止まる馬鹿が真っ先に死ぬ。
「…決断が早いよ、貴方はいつだって」
数日の船旅を終え、漸く萱島と戸和はRIC本部へ帰還していた。
然れど落ち着く間もなく、何やら誰もが切羽詰まった様相で、忙しなく周囲を走り抜けてゆく。
またTPの接触があったのか。責任者は焦ったが、やっと見つけた牧が告げたのは、2人の想定とは別な内容だった。
昨日の夜、寝屋川が姿を消した。
いつもの旅行なら未だしも、調査員も1人も残らず、待機所はもぬけの殻だった。
そうして捜し回る中、執務室に置かれた封筒が目に飛び込んだ。
白い枠に手書きの英単語がひとつ。中身は見ずとも、すべてを表していた。
「辞表でした」
「…何でこのタイミングで?」
「分かりません…昨日俺が話した時には特に…第一未だ帰ってきて日も無いのに、会社の他に理由があるとしか思えない」
会社の他、とは即ち彼の過去や…健康状態のことだろう。
確かに、具合が良くない旨は副社長越しにぼんやりと耳にしていた。
だが急だ。余りに急だった、律儀な彼らしからず、ひとつの予告もなく。
「急を要する件があったにしても…また休職で十分な筈だ」
世話になった牧とて悔しそうに、風のように去った男を恨む。
みな言葉が続かず地面を睨み、気まずい間が出来た。
「わったしっとー、きみだけの恋をしたいー」
誰だ。この近年稀に見るシリアス展開に歌を乗せるクソは。
しかもこれは牧の代表作(エロゲ)、シーズンメモリーズの第一期主題歌。
当の製作者がギギギと挙動不審に顔を上げれば、やはり其処には奴がいた。廊下の向こうからは久し振りーと手を挙げるクソ…もといゴミ経営者が距離を詰めていた。
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