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chapter.5-4
「おっ、どうしたどうした。何か楽しそ…」
「――死んでしまえ!!!」
腹部に渾身の一撃が入り、神崎がその場へ崩れ落ちる。
とんでもない無体を強いられていた主任は矛が収まらず、ワラワラと集まり宥める部下へ背後から取り押さえられていた。
「ま、牧…牧先生」
「俺がどれだけ今日まで!!どれだけ今日まで何度限界を超えて…!!」
「悟空みたいなこと言ってる…」
「牧先生、さっきも説明したけど…社長もなんだかんだ大変だったみたいだから許してあげては…」
正直既視感のある光景を目に、萱島らが見兼ねて止めに入る。
衝動のままに肩で息をしていた牧は、蹲る雇用主を見て今度は矢庭に泣き始めた。
「おっ…俺の渚がシャ〇トに見初められて…次クールにはBS深夜デビューする予定だったのに…」
「ええ…先生…アニメ化する予定だったんですか」
そりゃ主題歌うたいながら帰って来たら殴りたくもなる。
牧主任の怒りは決して、決して業務に関係する内容では無かったが、神崎が彼のスケジュールを圧迫したのは紛れもない事実であった。
「待て待て分かったから落ち着け、取り敢えずなんかその…ジャ〇ラックとやらには社長から電話しといてやるから」
「全然違え!!シ〇フトだよ!!」
蹌踉と床から起き上がるや、また父親のように適当発言でボルテージを煽る。
相変わらずの神崎に怒りつつも、妙な安心感に邪魔された牧は見る見る眉を下げていた。
「ああもう…いいやその話は…大丈夫なんですか、諸々」
「大丈夫かと言われると大丈夫じゃないけど、こっちの方は何だよ。やけに騒いでんな」
「…寝屋川隊長が辞表を出して、派遣調査員と消えました。その様子だと貴方にも何も仰ってないんですね」
些少なりとも、意表は突かれると踏んでいた。
しかし神崎とは神崎、突飛な話にも風場牛で、手渡された辞表にも結局ふうんと小首を傾げただけに終わる。
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