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chapter.5-7

「誰よ」 時折、夢を過去の記憶と誤認しそうになる。 だからあの男は実在したのか、そんな会話を交わしたのか、何一つ定かでない。 "手紙を渡して欲しい” だから、誰に。 前髪を掻き揚げ、痛みの襲う頭を傾けた。 これほど自分が気に掛ける理由は、光景を見るのが初めてでないからかもしれない。まあもしかしたら、単に同じ夢を二度見ただけの可能性も 「――パトリシア」 「…っ、はい!」 ノックが2回。 響いたのは明らかにCEOの声で、パトリシアは跳ね起きるようにベッドから退いた。 「入ってもいいかな?」 「あ…ちょっと、少し…ごめんなさい!」 「はは、構わないよ。下の会議室で待ってる」 鏡で寝癖と格闘していた少女は、すぐさま返ってきた言葉に胸を撫で下ろす。 小娘にも紳士的で、配慮に満ちた言葉で、何時も爽やかで。 パトリシアはいつもセフィロスを洋画の王子様の如く謳うが、同僚の女たちは誰一人賛同してくれない。 お子さま、子猫ちゃん、世間を知らないヴァージン・プリンセス。 散々な評価を寄越しては、最後に色んな男と付き合いなよ、と溜息を吐くのだ。 「…セフィロス様は格好いいわ」 結局寝ぐせの取れない髪をひとつに束ね、鏡へ言い聞かせるように覗き込む。 「見る目が無いのはそっちよ」 履き替えたキュロットのベルトを締め、散かったテーブルから部屋の鍵を探り当てる。 最後に磨いておいたパンプスに脚を通そうとして…パトリシアはヒールの高いそれを諦め、ラックから履き古したサンダルを出した。 きっと自分を着飾るのは、彼にとって必要でないだろう。 「すみません…遅くなりました」 「早かったじゃないか、話があるから此処に座りなさい」 会議室の扉を開けば、セフィロスと彼に呼ばれた数人が向かい合っていた。 全員ではない。 おまけにCEOの隣の席を示され、少女は何処か浮ついた気持ちで腰を下ろした。

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