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chapter.6-2
襲撃前日に上司はTPへ電話を掛けたが、此処の固定は到底逆探知など出来ない。所在地が漏れた訳でもない。
さすれば軍事参謀委か、いっそUNSCの連中か。
御坂の日本出立を知る者が、連中にエサを寄越した事になるが。
「俺が探りますか」
「いや」
答えかけ、不意に相手の視線が背後へ移る。
「お前は何してるサイファ」
いっそ問いを待ち構えていたかの様に、何ら悪びれなくゲート奥に潜んでいた副官が現れた。
四六時中つけ回っていたのだろうが、鼻を鳴らす太々しさも含め相変わらずである。
「何してる?随分な言葉ですね。私の育て方を間違えた件は、誰の責任かお分かりか」
「良く聞こえたな」
「コートに盗聴器を…それは一部です、貴方5つも仕込まれて未だ気付きませんか」
無言で自分の外套を捜す上司を眺め、いけしゃあしゃあと相手を責める。
此処までされて昔から叱りもしないのだから、確かに育てた側の責任も大概だった。
「なんでそんなに一杯入れるの」
「1つなら構わんという言い草ですが、そんな事より鼠捕りを仕掛けねば我が邸の柱が食い荒らされてしまいますよ」
勝手に自分の悪事を水に流す。しかし誰よりも早く異臭を嗅ぎ取り、猛禽の如く爪を研いでいる。
CIAの報告では、寝屋川庵は既に出国した。
UNSCはその対処で二分三分に割れている。
どいつもこいつも過去のツケの支払いを迫られ、苦い顔で自分のマキャベリズムを引っ掻いている。
愚鈍なことだ。歴史を何ら学ばぬ男たちを嘲り、サイファは事の問題を吐き捨てた。
「易々と代理戦争などするから拗れるのです。誰しも後ろめたいものが沢山で、安直にセフィロスを叩くことも出来やしない」
しかし、貴方はそうじゃないでしょう。
まるでカオスに向かい、最後の審判を下す神を崇める様に。
「行きましょうか、サー」
さあ、半刻後に迫る闘技場へ突撃しようじゃないか。
自ら追従を申し出る姿に目を眇め、御坂は敢えて返事もなくコロッセウムへ歩き出した。
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