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chapter.6-7

つまり揉み消そうとした悪手が今の今まで尾を引き、何も前進出来ずにいる訳だ。 精鋭の一小隊を消された損害は計り知れないだろうが、それ以上にどちらも戦争へ疲弊していたらしい。 イラク軍も負い目がある以上、賠償金以外にもさまざま差し出しただろう。 子供向けの道徳アニメよろしく敵と敵は結局裏で手を繋いでいる。 あれも結局は、大人が台本をつくっているのだから。 「寝屋川庵の部下は…第一小隊は砂の中に埋もれ、消えてなくなった。平和への礎という名目を尊び、政府は武装勢力に連れ去られた遺体の引き渡しすら要求しなかった」 男は過去数十年の重みが一気に来たように疲れ、重苦しい息を吐く。 TP社空爆も自分を見つけるハッタリだと気付いたのだろう。もう何の未練もなく、マチェーテへ携帯を差し出していた。 「…ああ何だかな、その部下を捜し続けていると聞いて…今更ながら自分の業の深さを思い知るよ。いい気味だ。こんな益体の首で良ければ、裁断でも何でもするが宜しい」 そう。国が捨て、世間が知る由も無く、骨組みだけの身体に風化しても、寝屋川庵は部下を決して忘れなかった。 執念の様にイラクへ飛び、仲間の尊厳を捜し出そうと現在まで。 「…遺体は、あると思いますか」 マチェーテはつい疑問を零した。この老人にも決して分からぬ話ながら、らしからぬ興味本位で口が滑る。 「さてな…連中が骨を川に投げて捨てる事だって考えられる。態々埋葬する義理もない」 「ではもし、遺体が無ければ…寝屋川庵は」 「目的を失い、怨念だけを抱えたテロリストになる。その矛先が我々に向くのか、イラクや武装勢力に向くのか分からんがね」 君の上司は、そうなる前に暗殺する計画もつくっていたのでは? ゆっくり膝を伸ばして立ち上がる男は問うたが、マチェーテは静かに頭を振った。 「死んではダメです。殺すのは尚更。死んだ人間には、もう誰も勝てなくなってしまいます」 イエス・キリスト。チェ・ゲバラ。歴代のカリスマたちが、死を以って不可侵の地位と掌握力を手にしたように。 寝屋川庵は戦場で死んでは駄目だ。 天寿を全うして、彼だけでなく彼の部下や信者を納得させなければ。

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