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chapter.6-8

*** 死んだ人間は概念になる。 いつか会議でセフィロス・ネイサンが漏らした言葉を、幼いパトリシアは首を傾げて聞いていた。 ただ成長した今は何となく分かる、死んだ人間は存在が無い以上、周囲の解釈次第で神にも悪魔にもなれる。 (本当のパパは唯の人間だったはず、他より努力家で賢いだけの) 約20時間のフライトを終えてTPへ帰還し、パトリシアは退屈な国営放送を前にぼーっとソファーへ身を預けている。 明日の夜、テレビをつけてごらん。 あのたった一行の指示を聞き入れ、こうして彼の落とした何かを変化として待ち望んでいる。 『――…本日は予定を変更し、政府の緊急記者会見を中継致します。会見の内容は公表されておりませんが、一部関係者によりますと…』 緊急記者会見? 少女は頬杖から顔を上げ、手繰ったリモコンでチャンネルを変えた。 しかしどれも、どのチャンネルに移行しても、もう画面は中継先への小部屋へ移り変わっている。 『――バート・ディーフェンベーカー氏の開発したモスル熱抗体に関して、新たな事実が発覚致しました』 リモコンがみしりと音を立てた。 何とタイムリーな話題且つ、不可思議に胸の中が掻き毟られるのか。 『えー…彼の未発表論文が発見され、抗体培養に至る前段階の研究に使用されたのが』 もう10年以上前の話だ。それが今になってこのタイミングでなど、御坂康祐の計らい以外考えられない。 『バート医師の娘、パトリシア・ディーフェンベーカーから採取した血液を元に』 「…は?」 リモコンがフローリングを直撃した。 自分が、何だと言った? 突然画面の中から名を呼ばれた衝撃へ、全身の肌が一気に汗を帯びている。 良い感情ではない。理解が追いつかない。 窓も無く締め切った部屋の中、パトリシアはテレビを睨め付けている。

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