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chapter.6-10
焦がれた筈の声。自分を求める台詞。
いつもとは比べ物にならないほど饒舌ながら、語られる言葉は何故か右から左へ走り抜ける。
「セフィロス様」
「おいでパトリシア、窓からグラウンドを見に行こう」
「え?グラウンド?」
困惑する間にセフィロスの姿は無く、少女は縺れる脚で男の後を追い掛ける。
何だ、この夜の最中をジェットコースターで滑り落ちるような感覚は。
まるで兎を追って深い穴に嵌る心地で、パトリシアは凍える夜の廊下へ飛び出した。
「――見てごらん!」
目前で解放厳禁のシャッターを開かれる。
途端に刺すような寒風と轟音が舞い込み、気圧されながらも眼下を覗き込む。
目に飛び込んできたのは大量のHMMWV 、イラン製主力戦車ゾルファガール、自走式対空砲。
10トンの搬入トラックや改造車が続き、グラウンドとは名ばかりの空き地は駐屯基地へ一変している。
いつの間に。否、この夜の一片の間に。
今から戦争を始めると言わんばかりの光景へ、窓枠を握る頼りない手は汗が浮かんでいた。
「驚いたかい、実はとある筋からPMC軍がウチに奇襲を掛けるとの情報が入ってね。急ではあるが護衛用にいくつか部隊を移して貰ったのさ」
「民間軍事会社が…?どうしてですか?何処からの依頼ですか?」
「確かに彼らの戦争はビジネスだが、どうも今回は私怨らしい。しかし先進国の人間なら別に銃を取らずとも生きていけた筈だ…自ら正義 無用の殺し合いへ上がっておいて、私怨等と一体何を…」
この場に居たのは2人だったが、恐らく最後の方は独り言だった。
無機質な目で変貌するグラウンドを睨むセフィロスに、少女は次の台詞も浮かばず次第に後退る。
「あの…私、」
「ああごめんねパトリシア、しかし君は本当に素晴らしい子だな…このタイミングで」
其処で続きを止めた。
何かに気付いた様に、セフィロスの瞳孔が見る見る広がる。
「いやそうか…御坂め、そういう魂胆か。相変わらず小賢しい男だ」
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