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chapter.6-16
「どうして明日の夜だと?」
『君の部隊はASAP(出来る限り早く)、夜間急襲が好きで、おまけに第160特殊作戦航空連隊 のOBまで連れて来た』
ナイトストーカーズ。友軍の素性まで知っている鷹の目に、寝屋川は思わず苦笑いする。
彼らは文字通り夜を飛ぶ。暗視装置を着けた飛行を難なくこなし、屋上からの侵入だろうが完璧にサポートする、言わば部隊戦力を120%に高めるバディだ。
「勝手に付いてきちまったんだ」
『翼を手に入れて過去へ飛ぶのは良いが、今の足元がお留守だな』
「何が言いたい」
『言論統制を敷いてあげようか?君と部下が三次大戦を引き起こした、世紀の大罪人にならない様に』
常のニヒルが剥がれた珍しい顔をした。
寝屋川の様子を本郷は訝しんだが、直後、彼は隠密中にも関わらず裏庭の最中で笑い出す。
「――ふ…ははは!聞きしに勝るな…まさかこんな体たらくまで使うとは、UNには余程人材が足りないと見た」
間近に居て内容は拾えていたが、本郷は会話の方向性を訝しむ。
つまり御坂は今、寝屋川の戦闘行為の隠蔽を申し出ている。
確かに三次大戦の引き金となっては不味いが、そんな譲歩をするくらいなら、寝屋川が出国するまでに仕留めてしまえば良かったものを。
要は何か、見返りを求めているらしいのだ。
『そんな難しい話でも無いよ、トワイライト・ポータルから物証を掠めて欲しいだけ。君が偶々其処を攻撃するから、ついでにね』
「何が偶々だふざけやがって。一体何を盗ってきて欲しいんだ」
『現政権と武装勢力の癒着、収賄疑惑の物証…後ろめたいなら何でもいいよ』
黙って聞いていた寝屋川の目が、漸く合点が行った様にするする細まる。
「ああー…Understand,sir…そうかお前、イラク政府を潰すつもりか」
寝屋川庵が政治を語る時、大概剣呑な目になるが、今日の機嫌もそれなりだった。
何か薬が切れた様に苛々と大腿を叩きながら、彼は明後日を眺め、しかし視線を帰した頃にはいつものシニカルな笑みを貼り付けている。
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