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chapter.6-19

*** ブラックタロンとはホローポイント弾の一種だ。 弾頭は6つのスリット入りで、着弾時に弾頭先端が裂けることで人体に大ダメージを与える。1993年の乱射事件を皮切りに生産中止へ追い込まれ、今はプレミア価格で取引される黒い鉤爪だ。 「ーー彼が物を組織の名前に選んだのはな…こう、六方に分かれて…隠密活動が致命傷を与える様子がどうのこうの」 「違う、適当につけたんだよ。僕は飲みの席で本人に聞いた」 言い合いの間も休みなくガタガタと机が揺れる。 貨物列車という荒い乗り物に揺られる一行は、カードゲームに飽きて退屈な道中を持て余していた。 そうして他愛ない昔話を続けていた。 その明るい一室へと、不意に第三者の影が揺らめく。 「…やあ、別れは済んだのか」 「別れ?」 勝手知ったるように机上のグラスを奪い、戸和は琥珀色の液体を煽る。 以前は酒も飲めない年齢だった。感慨深そうに眺める同郷2人は、反して変わらない仏頂面へ肩を竦める。 「電話してただろ、友人や恋人に話をしたんじゃないのか」 「いいや、諸々手続き上の整理を付けていただけだ。話を戻そう、TP本社の見取り図を見せてくれ」 「そいつは構わないが…」 嘗て組織を抜けた青年と違い、現在も諜報を生業とする2人は顔を見合わせた。 戸和は勝手に2杯目を注いでいる。リーダーがピンチだと伝えた時には困惑していた筈が、援軍を申し出て駆け付けた頃にはやけに落ち着いていた。 ついSOSを出してしまったが、まさか安寧の国を捨ててまで助けに来るとは思わなかった。 幾許か罪悪感も感じる。 そんな2人の心境を知ってか知らずか、戸和は度数の強いアルコールを体内へ流し込んでいる。 「なんつーか流石に電話番号も変えてると思って…掛けちまったけど、お前に繋がったのは予想外なんだ」 「今更言い訳か?黙れよ」 「和泉、同行は大変心強いけれど、ガロンは多分君が来ることを望まない」

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