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chapter.6-22
「何処に行くか聞いてもいい?」
「この列車は空港直通だ」
「…その先を、聞いてるんだけど…」
結局言う気はないんだ、その様な事を独り呟き、萱島は足元とこちらと視線を往復させる。
そして些少の希望を抱いたような顔で、今日追い掛けて来た目的を発していた。
「一緒に行っても良いよね?」
「駄目だ」
「な、何で?」
「危険過ぎる、暫く日本に帰れないかもしれない」
戸和が救い出そうとしているガロンは、部下の反逆が露呈してTPに拘束されたと聞く。
そこに急襲を掛けるという事は、結託したISILやその他諸々を敵に回すという事だ。
一生地下暮らしになるかもしれない。最悪始末されて、其処で終わるかもしれない。
そんな危険な賭けに、大切な人間を連れていくなど、到底
「足手纏いにならないから!君が…その、邪魔だって言うなら、近くで大人しくしてるから」
まるで最後の駆け引きみたく、必死な萱島が追い縋った。
否、本当に最後になるかもしれないのだった。当事者だからこれほど冷淡だった。
仮に逆の立場ならば、自分は脅してでも付いて行った筈だ。
「…絶対に駄目だ。後生だから、お前は会社で待っててくれ」
「待っててって…それじゃあ、君は帰って来るんだよね?」
出まかせでもいい、即答すれば良かった。
戸和はまったく愚かにもつっかえてしまった。
追い縋る萱島の瞳が見る見る透明になって、瞬きもせず固まっている。
付随して表情は理解し難いものへ呆れるような、鬩ぎ合う感情が結果、歪な形で現れたような笑顔に変わり果てていた。
「それ、勝手じゃない?」
ガタンガタンと線路の連結部を通り過ぎる音。
震えて裏返る声は掻き消されても可笑しくないものを、脳を直接貫いて流れ込んできた。
「何処に行くかも帰るかも言わないのに、待っててって、勝手じゃない?」
萱島に指摘され、何も言えない。
今まで有り得なかった展開は、最適な答えも用意出来ない。
途方に暮れて立ち竦む青年に、萱島は相も変わらず泣き出しそうな面で視線を彷徨わせている。
このエンドロール直前の場面で、どうにかバッドエンドを回避する正解を。その選択肢をヒントも無く、必死に捜しているように。
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