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chapter.7-5

「…ああーーもう結局…!結局助けられてばっかりだなあ、俺…!」 途方も無く情けなくて、然れど奥底から堰を切って変な笑いが込み上げてきて。 あんな格好いい部下が居て、叱りつけるほど踏み込んだ情を貰えるなら、なんて素敵な人生だろうか。 戸和が居なくなっただけで色々忘れ過ぎていたが、自分には彼だけでないし、彼だって世界を構成する人間は自分だけでない。 「そう俺だけじゃないんだよ、君を必要としてるのは…まったく悩んでる場合じゃなかった、場合じゃなかったんだけど…」 建物を目前に息を切らせて急停止する。 先とは別な冷や汗を流しながら、萱島は途方に暮れて電柱に問うた。 「…何処に行けば良いんでしょうね」 戸和くんは昔の仲間を追っかけて行った。 ということは中東近辺、という漠然とした情報しか自分にはない。 おまけにこのご時世でビザは発行されておらず、一般人が入国する手立ても無い。 もう積んでしまった。 虚しい状況に半笑いを浮かべていたが、ふとそんな窮地へ天の声のように記憶の一端が引っ掛かる。 ――あ、そうだ…もし何か困ったら連絡して下さい。 実に掴みどころのない声と赤い髪。 馬鹿でかい空母から日本まで送ってくれた青年の顔が蘇り、萱島は迷いなくポケットから携帯を引っ張り出す。 「いや…駄目元で仕方ない」 例え邪険にされてもそれからだ。 縋る思いで電話を掛ければ重みが通じたのか、10を数えた辺りで単調な機械音は途切れ、件の掴みどころのない声が用件を問うてくれた。 『…職員のご親族ですか?』 「あっ…すみません、あのアポイントメントが…アポイントメントを」 『アポイントメント…?いえこの時間は、ゲストの方はお取次ぎしておりませんが』 なんだと。あれから優に半日近い時間を掛け、アメリカのとある機関窓口に突っ込んだ萱島が石化する。 確かに朝方約束の取り付けに成功した筈が、最後の頼みの綱に門前払いされるとは。

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