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chapter.7-7
「そんな顔しなくても、僕も焚き付けた責任はあるからね」
そう言えば空母内でその様なやり取りもあった。
矢張りあの頃には、戸和のバックグラウンドも察していたという事か。
「…いえ、あの…でも先生の言う通りだと思ったから」
「そう?じゃあ君はどうするか考えたの?」
「取り敢えず追い掛けて、行きたいんですけど…」
「追い掛けてね…なら一先ず本郷くんに合流するといいよ」
弊社の副社長は、何やらこの御人の命でTP本社に居るらしい。ということは戸和も其処に向かったのだろうか。
そうか、あのTPの船で出会った曰く彼の旧知。
彼の身柄を助けに行ったのなら、確かにTP本社に関連づくのも納得だった。
「しかしあの近辺は現在非常に不安定な情勢です。子猫、貴方のお仲間とやり合う羽目になるかもしれませんよ」
「えっ!仲間…?やり合う…って…まさか」
消去法で考え、直ぐさま脳裏へ失踪した調査隊長の顔が浮かぶ。
彼の目的は知らないが何だ、どうしてこうも皆吸い寄せられるようにイラクなんぞ危険な国に集結しているんだ。
まあ根幹を辿ればすべてTPが絡んでいるのだが、事情を知らない萱島は百面相をスロットの様に繰り返している。
こんな夜更けに曰く”国連機関”とやらが稼働しているのもその関係か。
萱島が灯りの点いた建物を見回していると、目前の責任者が首を傾けて指摘を寄越した。
「夜勤だから残業じゃないよ、君のところと違って」
「心の中を読まないで!!」
「それで子猫、貴方本当にTP本社へ向かうつもりなんですね」
副官に再三確認され、結局怯んだ。
萱島は今のバックグラウンドなど知らない。増して戦地に渡るほどの大儀も、生き残れる後ろ盾どころか覚悟すら。
あるとすれば、唯一人の人間に会いたい。そんな身勝手で世間からすれば紙のような思いだけで、単身無鉄砲に飛び込むなど
「…中身まで子猫ですね貴方は。私には理解出来兼ねます、爪の立て方を忘れたのですか?」
よもや年下であろう女性からその様な揶揄を受けた。恥ずかしいどころか情けなさに青ざめれば、ニコリとも笑わない彼女が盛大に嘆く。
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