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chapter.7-9

*** 「さっきから時計ばかり見てどうしたの?」 地下へ下る階段の手前で止まった。 本郷の挙動を訝しみ、少女は靴の留め具の位置を直しながら覗き込む。 「…夜間急襲って何時にやると思う?」 「は?何?何の話?」 突拍子もない問いについ声が大きくなった。 が、考えてみればしかし、突拍子はなくも無かったのだ。 事実として会社には大量の戦闘員や軍用車が犇めいており、明らかな襲撃を待ち構えている。 ただその問いは決まって答えられる定型文も無く、結果、パトリシアは新たな質問を被せるに至った。 「…もしかして貴方の上司からの情報?」 「ああ、まあそんな所」 「今日来るの?」 「明日の…ん?もう日付変わったのか…そうな、今日の夜」 水とレーションと応急手当のキットを抱え、本郷は何てことない様に肯定を寄越す。 2人は今、例の捕虜を助けるべく幽閉先の地下に来ていた。 最初は果たしてどうしたものかと思ったが、パトリシアの権力は最早マスターキーと化しており、警備は姿を見るなり簡単に道を開けてしまったのだ。 「…正確な時間は分かるの?セフィロス様に伝えなきゃ」 「お前が言ったら変な顔されるだろ、というか俺も良く知らんし」 「知らないの!?…ああ、着いたわ」 矢張りと言うか少女は怯える様子も無く、目前の倉庫へと意識を戻してしまう。 とんでもねえ肝の座り方だ。 本郷はやっぱり誰かに似た姿をまじまじ眺めつつ、警備から奪った鍵で独房の入り口を割り開いた。 「――ハロー、サー」 乱暴に鉄パイプへ縛られた姿が目に入り、一先ず挨拶から入った。 幸い大した怪我も無い彼は、スーツを着こなした男と少女の組み合わせに言い難い顔をしている。 「本郷と言います、こっちはパトリシア」 「…こんにちは救世主のお嬢さん。紳士も何の用かな」 柔らかい物腰に虚を突かれる。アラブ系の顔立ちをしているが、随分綺麗な英語が返って来たことにも。

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