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chapter.7-14
携帯のライトで行く先を照らしながら、幾つか分岐を曲がって安全な出口を目指す。
緊張の最中でも話を進めるべく、本郷はとにかく有識そうな彼の助言を仰ぐ。
「成る程…セフィロスがその件で何かを知っていると。ただ不思議なのが、どうして当人が籠城戦を選んだのか…これだけの部隊を集結させる時間があれば、国外逃亡や交渉も出来たでしょうに」
この大軍を集結させているという事は、曖昧な情報でなく誰が攻撃してくるかまで知っていた筈だ。
そして寝屋川が来ると知っているならば、その目的も当然。
「敢えて真っ向から出迎えるつもりなのか、やるじゃないか」
「そういう性格には見えませんでしたけどね…」
「彼とやり合えば、生き残っただけでもメダル オブ オナー…新興組織ならネームバリューは欲しいよな」
はあ、そういうものか。
評価しているのか舐めているのか。根っからのホワイトカラーで理解し難い本郷は、何より最も心配している件を零した。
「…あれが死に急がなきゃ良いんですが」
立ち止まったガロンが首を捻る。
本郷は昨夜に見た酷い顔色を思い、嫌な予感にポケットのレシートをぐしゃぐしゃと丸めた。
寝屋川庵はエンディングへ辿り着くだろうか。
無論、生涯のエンディングでなく、10年前にこの地で始めた彼の戦いへのエンディングにだ。
そもそも彼の解決とは何だろう。
遺体を回収して得る物は何も無く、その後は靄が晴れたアヌシー湖の様に、ただ透明に世界を映して海へと流れてゆくだけで。
「――…お久しぶりです、随分とお久しぶりです!もう会いたいと考えて月日は30年も経ちました」
「30年前なら君は父親の✕✕の中で暴れていた頃では?」
「ノーノー、僕はキリシタンではないので輪廻転生なんですよ。そうだろコーレニカ!」
相変わらず目前の青年はよく分からないジョークを並べながら振り返り、既に豆粒ほどになった弟を見て声を荒げる。
「コーレニカまたか…!お前いつも俺を!」
「お前は昔から一日に何回コーレニカを呼ぶんだ?俺はお前の名前を忘れそうだよ」
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