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chapter.7-16
「当初の予定より人員が増えた、分隊編成と展開ルートを見直す。それから突入の脚はFAV(高速攻撃車両)、撤退時はヘルプでMH-60Kも」
「…FAVですか。ナイトストーカーズは対地攻撃用に?」
「正解だ、俺の降下急襲は恐らく読まれてる。RPGを喰らってソマリアの再来は御免だろう」
直前でもあれこれ作戦を変えられるのが我々の強みだ。
上司は病に捉われた身体を起こすと、手前の机にあった物を押し退け、TP本社一帯の航空図を広げ始めた。
「俺がマークした箇所を頭に入れろ。✕印まで車両移動し、その後徒歩でポイントまで展開する」
「…些かポイントが多過ぎる様ですが?」
「ハリーよ、君たちの特技を思い出せ。弾一発の威力が数十倍になるやり方は口煩く教えたな」
「ああ…分隊編成を見直すとは…そういう」
開幕忙しい明日を予見して眉を寄せる。ウッドはマーカーされた航空図を畳んで仕舞うと、改まって姿勢を正し敬礼を寄越した。
「では私からは一つ忠告を。随分体調が悪い様ですが、ご自身の影響力を考えて責任ある行動をお願いしますよ」
「勝手に話を広げておいて随分な言い草だな」
「ご承知おき下さいませサー、例え貴方一人で戦場に向かっても…貴方が死ねば三次大戦の引き金となる事を」
エアコンを回そうが、分厚い遮光カーテンの向こうから陽射しが部屋を蒸す。
湯で釜のような国で部下の指摘を受けながら、寝屋川は誰も居ない天井へ長年の疑問を漏らしていた。
「…身体が重い、俺は何処で何を取り違えたんだ」
時折、今日みたくこの英雄が弱音を落とす。
その度にウッドは夜が早まった様な、死神が近い様な悪寒を覚えて辺りを見回すのだ。
「お前に薬を買いに走らせた時分、あの会社で死んでいた方が良かった」
「…其処までは申し上げておりませんよ」
「俺はもう自己満足だ、お前がそう言った通り。俺が捨てた当たり障りの無い日常に、救われる人間の方が多かった筈だ」
そう、寝屋川は悪寒の正体など、自らのどうしようも無さなど、無論全部知っての事だった。
イソップが書いた様に、足りないものを手に入れるよりも、失ったものを取り戻すことに関心があるのは人間の性なのだから。
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