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chapter.7-18
「上が騒がしくなれば動く手筈だったが…襲撃は未だか?あと一時間半もすれば夜が明けるぞ」
本郷は混乱に乗じて役員らのPCハックを画策していた。
結局寝屋川らと連携が取れない以上、直接的な介入は無謀だと判断した為だ。
「Mr.ガロン、状況を知る為にも一度俺は上に」
「quiet, sir」
台詞の途中で口を塞がれ、語尾を飲み込む。
「何か来るぞ」
男の指摘に耳を欹てれば、確かに僅かな足音や息遣いが下流の方角から迫っている。
この先は外部のマンホールへ繋がっている筈だが、まさか侵入者と鉢合わせたのか。
気配は一つ前の十字路で止まり、相手も此方を伺っている事が知れる。
ガロンは姿勢も低く小銃を構えたが、その均衡の最中、不意に2回鳴らされた味方識別音 へ首を擡げた。
「――…ハイネか?」
声を掛けた途端、相手は驚くほどすんなりと姿を見せた。
サー、と感激したように呟き、背後の仲間を振り向いては共に走り寄る。
仲間だったのか。
本郷は呆気に取られて成り行きを見守っていたが、ふと殿から現れた3人目へ目が止まる。
やけに見覚えのある立ち姿だ。思わず眺めていると、嘆息するガロンが衝撃的な答えを寄越してくれた。
「二度と来るなと言った筈だ?ハイネ、ティーバ、そして和泉よ」
「ん?」
視線の先で当人が暗視装置を外し、日常的に見慣れていた顔が現れる。
確かに君の話をしていた時分、誰かが口を滑らせれば君も来るだの何だの聞いた様な気はするが。
「…戸和…?戸和くん?」
「副社長…?何故一緒に…否、」
軽装ながらCQB装備を携えた部下は言葉を止め、しかし直ぐに目的の方を向いて先を促す。
「貴方の説教もまとめて後にしましょうガロン、どうやら我々は間に合ったらしいので」
「何が間に合っただ足手纏いども。こちとら紳士に助けられて、レッドバインズ派閥まで組めた記念日だぞ」
「足手纏いは認めますが、来てしまったのは貴方の責任でもあります隊長。分隊が手元に帰ったのですから、指揮を執って頂きませんと」
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