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chapter.7-19
ハイネと呼ばれた彼まで続き、何やら苛立たし気なガロンを追い立てに掛かる。
三者のやり合いを後目に流し、本郷はGPSで地形を確認する部下へ気になった件を問うていた。
「…なあ戸和、萱島は?」
「その件も後で」
一寸考えた後に、それだけ吐く。
結局言う気もなさそうな返答を訝しんだが、確かに言う通りこんな場所で世間話を続ける訳にもいかない。
「――分隊の指揮か。私の作戦は目下この紳士の助力だが、護衛は2人で良いだろうな」
「残りは?」
「この機にCEO暗殺と行きたかったが、流石にそれでは横取りが過ぎる」
戸和は船上で聞いたガロンの目的を思い出し、イルミネーターの作動を確認しながら問い返した。
「横取りとは?」
「寝屋川庵と彼の派閥が直に来る。部下に関する情報を求めて、恐らくCEOの捕縛に動く筈だ」
青年の涼しい目が本郷へ移り、信憑性を問うように細まる。
保証の意味を乗せて頷いてやれば、彼は妙に他人行儀な顔で了解を返していた。
「俺とハイネ、Mr.本郷はS1、和泉とティーバはS2として展開…」
「あー…すみません、僕は未だ少し会社に残ろうかと」
「正気か?籠城戦になれば君の命も塵芥だが」
中立ぶって肩を竦めてみせると、何だかんだ慈悲深そうな男が溜息をつく。
「まあ、確かにあの少女を置いては行けまいな」
「そうなんです、あと木曜と金曜が休みなので」
真顔のガロンは意味不明な様相だが、こちとらもう少し束の間の休息を楽しみたかったのだ。
広げていた見取り図を雑にポケットへ入れると、本郷は場を仕切り直す様に咳ばらいをして続きの見解を述べた。
「それから…多分寝屋川が来るまで未だ時間がある。夜間でも無ければ、手段は降下急襲でもなく」
目を伏せて聞き入るガロンが続きを促す。
そう、こんな第三者まで把握した駒の動かし方を、あの男が大一番で使う筈が無いのだ。
「彼の戦術は知りませんが、思考なら大体分かります。アイツは定石を嫌う、奇を衒うのが好きだ…ーーだから恐らく…」
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