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chapter.7-20
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「――…未だか、未だか未だか未だか!こちとら革命軍の聖戦と聞いて駆けつけてみりゃ、平和公園の静止画を見せられてもう5時間だ!」
歩哨の一人が喚き出し、構えていたAK47を放り出そうとして周囲へ諫められる。
元々血の気の多い人間が集うばかりか、互いの人生も知らない様な寄せ集めが軍隊を作ったのでは、こういった綻びから瓦解しそうで緊張が走る。
革命軍は痺れを切らしていた。歯ぎしりしていた。
緊急招集が掛けられて数時間、夜の寒空で体温が奪われるままに待たされていたのでは、確かに立腹して末端が騒ぎ出すであろう頃合いだった。
「同志…神の子が見ているぞ。トワイライト・ポータルとの協定がある以上、何が来なくても警備任務は必要になる」
「警備?警備でこれだけの人数…神の子を匿っているというだけで、あの会社がどれほど偉いと言うんだ」
「…本部、流石に疲労がピークだ。この部隊は要だから交替を頼む」
寄せ集めとは言え、中にはイスラエル国防軍から流れて来た精鋭も居る。
隊員の一人が無線で指揮所へ警告すれば、デジタル変調を加えた声は淡々と新しい話を運んできた。
『ザッ…カブル――志として申し訳ない限りだ諸君…連中はどうやら延命を選んだらしいのだ、状況が変わった以上、我々も作戦を変更せねば』
「…延命?どういう事だ?」
『――…時刻、空を見よ同志。イラクは直に夜が明ける、襲撃は今日でない』
皆が一斉に凍りかけた首を上向けた。
東の方角では確かに、ゆっくりと目覚めを告げる橙が闇を溶かし始めていた。
太陽だ。
何人かが揃って同じ方角を指差し、重い溜息を絞り出す。
間もなく午前5時を迎える頃、とうとう曙が人類へ夜の終わりを告げに現れたのだ。
「急襲は延期か…!随分と我々を虚仮にしてくれるな!」
「延期したところで利点は薄いだろう、知将と謳われた男が何故そんな策を…」
考え込んだ折、皆の耳へ再び無線が入る。目に隈を蓄えた一行は反応も鈍く、撤退の連絡かとだらしなく続きを待ったが。
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