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chapter.7-26
「い、嫌です…私は此処に残るもの!」
「君の意見は聞いていない、荷物は後で送るから直ぐに行くんだ…もう時間がないな、連れて行こう」
「…私が居た方が!セフィロス様だって…融通が利く筈だわ…!」
パトリシアが聞いた例も無い金切り声を上げ、相対するセフィロスから距離を測ろうとする。
しかし周囲が気圧される間にも腕を掴まれ、無理やりにも廊下を階段へと急かされていた。
「っ…地下での事を思い出したの!貴方は確かにあそこへ監禁されていた人達をう、撃ち殺した、でもきっとそれは」
「もう黙れパトリシア」
踊り場で動きが止まり、少女の頬へ俄かに鈍い痛みが飛んだ。
叩かれた事を悟り呆然となる。どうにか首を擡げれば、見た例もない凍える様なセフィロスの視線が降り注いでいた。
「私は君を利用した。以前君に渡した時計には、何時でも君を殺せる仕掛けが入っていた」
「…そんな」
「君は御坂への脅しとして十分働いてくれた。後はさっさと安全な場所へ消えてくれ、今は君が死ねば厄介な事になる」
恐ろしく無慈悲な通告を受け、ショックで塞ぎ込むと考えていたのに。
確かに顔を覆おうがその実泣きもせず、少女は寧ろ小さな疑問を見付けて瞳をぎらつかせていた。
「…どうして今更?」
踵を返して先行しようとしていたセフィロスが止まる。
ゆっくりと持ち上がる彼女の表情は、衝撃よりも真相への興味に傾いていた。
「貴方がそれを話したのも、このタイミングで私を追い出すのも、どうして今?」
矢張り血筋か。幼い様で聡い少女の追及が刺さり、セフィロスは眉間へ皺を刻む。
もう問答は要らない、さっさと脅して連行すべきだ。見切りをつけて銃身へ手を伸ばした矢先、階下の窓がいきなり外部からの衝撃波で吹き飛んでいた。
「ーーっ…!セフィロス様、」
(ナイトストーカーズの対地攻撃が始まったか)
窓の外へ火の手が上がり、その付近でまた次々と爆発音が響く。
ブラックホークが積んでいるとすればAGM-114か。セフィロスは暴れる少女の腕を掴むと、半ば引き摺る様に屋上のヘリポートへと急がせた。
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