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chapter.7-27
本社前エリアは混沌だった。
寝屋川率いるPMC軍が奇襲と火力で防御線をこじ開け、車輛を容赦なく対戦車ミサイルで蜂の巣にしていた。
既に主力部隊の去った一帯は静かであるが、それでも散発的な銃声に虚を突かれたりする。
隙間から覗き見れば革命軍らがパニックで味方を誤射しており、ティーバは思わず隣の相棒へ苦い顔を向けた。
「…何だか目的が良く分からなくなってきたな」
「ガロンの目的が変わっただけだ、今は本郷さんのサポート…俺たちは彼らの脱出口を確保して、撤退を援護すれば良い」
「ふーん、まあお前は無事脱出が完了すれば本国に帰るんだよな?」
反対方面を警戒しつつ、ティーバの台詞へ目を瞬く。
戸和は得物を小銃からARへ持ち替え、怪訝そうに相方を振り返った。
「帰る?」
「来る時思いっきり揉めてたじゃねえか、その指輪の相手が待ってんだろ?」
「いや、そんな簡単には…」
「まあ深入りしたしお前にも鼠が付くよな、でも昔からそういう所…」
小言を言い掛けた。ティーバは結局言い淀み、次には閉ざしてそっぽを向いてしまう。
「あー…、お前が決めたなら口は挟まんが」
昔からそうだ、誰も強くは否定しない。
瀬戸和泉という人物の考える事やる事。渋い顔で文句を言うまではあっても、今まで真っ向から叱られた例など数える程だった。
融通の利かない態度も原因だろう、然れど別に反論して貰えれば、討論くらい出来た筈なのだ。
(アイツはずっと従順で俺に合わせて、色々窮屈だったろうな)
いつも隣に居た存在を思い出し、戸和は同時にやり取りも反芻して黙る。
萱島は何時だって最後にはこちらの暴論にも折れ、腹の底に蟠っていてもすべては出さない性格だった。
だからあの夜、列車に飛び乗ってまで追い掛けて来た姿には心底驚いた。
何か世界が変わった様な気さえした。なのに。
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