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chapter.7-35
『いや兎に角、未だちょっと帰れない用事があるんだよ…寝屋川の事もあるし、この会社には遥の妹も居るし』
「…何?何て言いました?」
萱島は看過ならない情報へ止まり、思わずシンプルな疑問を投げつける。
「その妹ってヒト科ですか?」
『ふっつーに良い子だよ、ちょっと…いや結構似てるけど。そんな事より寝屋川な、アイツの部下の遺体がこの会社に在るんじゃないかと攻めて来てんだ。当時、拉致尋問のために拘束されてたとか何とかで』
「ああ、成る程…その関係で御坂先生も忙しくしてたんですね、でも何で止めに来ないんだろう。大事になりません?」
『御坂は寝屋川に協力を申し出た。アイツも本社を捜索したくて、利害が一致したらしい。その辺は良く知らんが、未だ何か隠してる気がすんだよなー…一つの目的だけで、御坂がこんな賭けに出る気がしないだろ』
「…先生には聞けない?」
『ないない、俺の首が物理的に飛んでくわ』
話がまた複雑になってきた。
正直うちが関われる規模でない気がしたが、既に社員の一人が密偵として絡んでおり、そもそももう一人が主犯として突っ込んできている。
「…隊長には無事で帰ってきて欲しいが、こっちの都合で止める事も出来ない。すべてを待つしか。ただ武装勢力に手を出した以上、今後一生目の敵にされるのは確実だ」
「それじゃ会社に戻れないどころか、大きな戦争になるかもじゃん…そんなリスクを許して、先生は何が欲しいんだろう?」
『…因みに御坂が寝屋川との交渉条件にしたのは、”戦闘行為の隠蔽”だ。奴はこのエリアを封鎖して、対外的には何も無かった事にするらしいんだ』
「隠蔽?…なんかそんな事までして…先生は隊長に”お願いですから本社を攻撃してください”と言わんばかりだね…?」
「確かに。そして先生は即刻で空母まで動かせるにも関わらず、今回は傍観を貫いてる…そんな面倒な協力を申し出てまで、寝屋川隊長を支援するのは、つまり」
『――…ああ、成る程ね…”国連としては手出ししたく無かった”、そういう事か』
戸和の声もばっちり拾っていたらしく、結論に至った本郷が納得して頷いた。
1テンポ付いていけない萱島が首を捻ると、隣の青年が解説する様に思考の経路を嚙み砕いてくれる。
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