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chapter.7-36
「はい、国や世界機関が相手では、戦争は末代まで禍根を残す事になる。しかし寝屋川隊長の部隊は退役兵こそいるが、民間企業だ。雲隠れなり解散なり出来てしまう、言い方は悪いが国より責任が軽い」
「じゃあ…言い方は悪いけど、先生は寝屋川隊長を使ってトワイライト・ポータルを潰したかったってこと?」
『だろうな、途上国の武器供給会社なんて邪魔でしかないし…後はほら、グローバルに活動を許されてたって事は、背後にあっちこっちの利権が…』
タイミングが良いのか悪いのか。
うっかり悠長に話し込んでいる間に、双方の無線から地鳴りのような音が響き始めた。
戸和は振動する壁面を目に、相手の腕を引いて出口捜索を再開する。
この地下道もとても安地とは言い難い。おまけに頭と尻を塞がれれば、袋の鼠になりかねなかった。
『…やべえな、本社前への砲撃が始まったらしい。お前らは出口が塞がる前にさっさと戻れよ』
「此処まで来て戻れませんよ」
『目的をはき違えんなよ萱島、何方かが死んだら此処に来た意味も無くなるんだぞ。俺もデータを移し終えたら早々と退避する…後は』
戸和と顔を見合わせて逡巡する。
上司の言葉は全くそうだ。反論のしようがない、けれど。
『後はそうだ、寝屋川がその内帰って来られる様に会社の今後を考えないとな…実働隊丸々消えたら潰れるし、遥もまあ色々あったし…御坂に報告し終えたら俺もなる早で帰るわ――嫌だけどさ』
『――…ルートQ5周辺戦車の沈黙を確認しました』
『14分隊、正門2ブロック手前に到着、無人機でエントランス確認――『マップA2D28、2分隊ほど潜伏、火力は』『…8支援分隊、ルートQ5-3到着しました』
絶え間なく入り込み続ける無線と、マップの彼方此方に紐づく状況報告。
自らも前線に身を投じながらすべてを把握し、寝屋川は引っ切り無しに指示を返しながらも先陣で本社前へ到着していた。
今日の頭は異常に冴えている。
帰国してより常に靄が掛かっていた思考が晴れ、全ルートが回復しつつある。
すべてが順風で、徹頭徹尾うまく進んでいる。
矢張り今日だったのだ、我々が部下を見つける記念日は。
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