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chapter.7-37

昇り始めた暑さのお陰か、首を伝う汗を拭った。 作戦開始から25分が経過していたが、元々屋内の戦いを得意としている身では、既に最難関は通過したと考えて良い。 漸くだ。漸く昔間違えた分岐へ帰って来ている。 止まらないアドレナリンへ身を窶しながら、寝屋川庵は突入のルートを模索し、随分前に自分の物でなくなった肺を押さえ付ける。 (もう直ぐ、もう直ぐだ、もう少し) 正直最初は半信半疑で飛んで来た。 然れどあの夜、御坂康祐が電話してきた事で此処が正解だと確定した。 そして調停者が狙っているという事は、深入りすれば火傷で済まないレベルのスポンサーが絡んでいるのだろう。 つまり今日で最後だ。部下に約束した件も含め、どう足掻いても今日のこれで最後。 『――…大尉(Captain)』 また無線が入った。顔を上げて応答すれば、相手は砲撃を終えて仮説基地に帰還しようとしていたナイト・ストーカーズだった。 『屋上に起動中のヘリが』 「…何機だ?」 『3機です、1機はキャビンを開けて搭乗待ち状態…型は…ロビンソンでしょうか、民間用で恐らく6人乗り、その他2機は軍用機、AH-1Z ヴァイパー…』 数人用のヘリ。何故土壇場まで前線に居たのかは知らないが、其処に搭乗する人間は明白だった。 CEOのセフィロス・ネイサン。そして役員。 てっきり腹を括ったものと踏んでいたのに、この窮状もISILも残して去るつもりなのか。 空から逃亡する可能性を考え、幾つか予備機を残しておくべきだった。 突如ぽっかりと穴の開いた作戦を前に、覇気の消えた寝屋川の声が無線へ問う。 「今から、基地に戻ってどれくらいで再攻撃できる?」   『20分は…機銃なら残弾がありますが、エンジン破壊は無理でしょう』 間に合わない。 此処まで平静を保っていた思考がエラーを知り、どろどろとエマージェンシーへ傾き始める。 セフィロスをプライオリティに、等と言ったが、他に情報を知る者を捜している時間など無い。リスクを犯す時間も、これ以上人材を裂く事すら。そもそも

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