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chapter.7-42
其処にはアサルトライフルを携えた若い男が立っていた。
フロアには先まで言い争っていたISILが転がっており、しかし麻酔弾の類いで撃たれたのか、出血した様相も無い。
侵入者は目を覆うゴーグルを持ち上げ、セフィロスに軽く敬礼なぞして見せた。
どう見ても知り合いではない、赤い髪の不審な男は、ふざけたトーンでこれまたふざけた台詞を投げて寄越した。
「どうもお世話になっております、お荷物の配達に参りました」
荷物など頼んだ覚えはない。
最悪の事態は免れたものの、不穏な展開にパトリシアは凍り付いている。
「…何処から来た荷物だ?」
「送り主ですか?R.I.Cです、ことに労基法の順守はされていませんが、まあ中々資産価値のある会社ですよ」
「おい誰がブラック企業のお荷物だ」
そして背後にもう一人居たらしい。
緊張感のない声へ呆気に取られていると、今度は見覚えのある姿が現れて言葉を失った。
「案内ご苦労ラザル君、手間賃諸々は御坂に請求してくれ」
「貴方にその名を呼ばれる筋合いはありませんサー、マチェーテとお呼び下さい」
「…神崎遥」
曰く”配達物”の男の名をぽつりと呟く。
相手はCEOを軽く一瞥したのみで、さっさと目的であろう床に転がった部下の元へと駆け寄っていた。
「おい庵生きてるか、目的の前に死ぬなよ」
どうやら喀血を予測していたのか、止血剤の類いを打っている。
自社の社員を迎えにきたなら殊勝な事だ。治療処置を施される敵を傍観しながら、セフィロスは隣で固まる少女に教えをやった。
「パトリシア、あれは君の兄だ」
「…え?」
「迎えに来たというより御坂の遣いか、配達員の君はUNSDHの職員か?」
「いや僕は…今は配達員です、此処では実弾一発も撃てませんので」
肯定したようなものだった。セフィロスは話の傍ら、衝撃で表面の罅割れた腕時計を確認する。
恐らく猶予はあと7分ほどだ。予定があるゆえ話を急がねばならず、CEOは赤い髪の青年へ単刀直入に用件を切り出した。
「して、目的は?」
「Mr.セフィロス、御坂は確かに貴方への協力を了承しました。しかし間接的にだろうが我々の部下を殺したのも事実…本部へ連行するよう指示を受けています」
「成る程。神崎遥まで来た理由は?」
「俺は左手のお礼参りに」
当人の布地に覆われた手へ視線を移す。ISILに追い回されている間に負傷したのか捥がれたのか知らないが、どちらも間接的で言い草からもふわふわした理由である。
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