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chapter.7-46

「――…おい、あれは」 時を同じくして本社前。 未だPMC軍と小競り合いを続けていた武装勢力が轟音に頭上を見上げ、同時に双眼鏡で屋上を注視する。 「白旗…」 そして堂々と風に靡く布を視認し、絶句して怒りのまま双眼鏡を投げ捨てた。 「…ふざけるな!分が悪くなれば投降か…!?ホワイトカラーの腰抜けが…やってられるか!」 「契約金はどうなる?…何にしろこれ以上付き合う必要はない、もし連中が国連軍に泣きついていたら介入してくる、引き上げるぞ!」 維持していた防衛線を捨て、これ以上は無益と判断したISILが次々と車輛に向かって撤退を始める。 PMC軍も戦況を悟り、次第に過度な反撃を止めた。 泥沼を覚悟していた戦は唐突に終わりを告げた。たった一本の旗で風向きが変わり、本社の解放を目に調査員は揃って片眉を上げる。 ルートは確保された。が、肝心なのは最終の目的であり。 「――…お見事」 窓から敷地を眺めていたセフィロスが呟く。 「君の勝ちだパトリシア」 階段を降りた少女は不遜な笑みを受け止め、綯交ぜの感情で立ち尽くす。 彼の背後ではマチェーテに介抱されていた寝屋川が立ち上がり、鈍い目でやっとCEOを捉え直していた。 「…セフィロス、聞きたい件がある」 それはそうだろう。CEOが振り向けば、寝屋川はやや迷って斜めからボールを投げた。 「何故態々俺の部下を殺した?」 其処には非難の色が無かった。唯々純粋な疑問、そんな白さで敵に問うている。 「何故?意味を聞くことか?」 「…!違う、セフィロス様は…」 「パトリシア」 上司に止められ、つい口を挟んでいたパトリシアは身構えた。 ただ彼は叱るでもなく上着を探り、何かを放って此方に寄越しただけだった。 「彼に地下の部屋を見せてやってくれ、分かり難いが奥にドアがある。私は…この配達員らと話があるのでね」 乗り出して受け取った物は錆びた銀色の鍵だ。もう何年も前に作ったものだろう。 年季の入ったそれを握り、少女は自分に課された任務へ腹を括った。 「…歩けますか?」 寝屋川を振り向き、声を掛けた。 相手は当然のこと、口元の血を拭って怪訝な目をしている。 「貴方の部下の所まで、案内します」 乱れた前髪の下で、砂色の目が光った。 手紙に有効期限はあるのだろうか。 今更でないと良い。パトリシアは拙い希求を胸に、踵を返して先導へと歩き出した。

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