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chapter.7-49
どうかこの事実が伝わって、貴方が彼らを恨みませんように。
僕はふと、戦争とは蓋を開ければこんな些細なすれ違いじゃないかと良く考えます。
勿論中には過激な連中も居ますが、最初はみんな誰だって同じ方角を向いていたのではないでしょうか。
此処からは見えませんが…皆と見たファルージャの星空、あの息を呑むほど綺麗な光景とかね。
きっとそんな物で良いのですよ、本来。
サー、我々の遺体はただの殻です。
僕らが入っていた、器に過ぎないのです。
貴方がいつも銃に弾を込める際に指導していたのと同じ、
僕らの本体と言うのは魂であり、それは貴方がもう心に留めてヘリへ乗り、祖国へと連れ帰ってくれたのです。
貴方は僕らのことを、今の今までずっと覚えていましたね。
自惚れではなく断言しましょう。先ほど手紙を託した少女を優秀と話しましたが、貴方が我々を捜し続けていない限り、この手紙が届くなんて事は有り得ないでしょうから。
貴方は我々を置き去りにしませんでしたよ。
貴方は今の今まで、僕らを連れてずっと歩いていたのです。
…怒らないで下さいね。
貴方は稀にどうしようもなく馬鹿になるので、僕はそれを直接言いたかった。
結局今になってしまったのです。一体何年後でしょう。遅くないと良いのですが、僕らは幸せだと貴方に直接言いたかった。
ああ、もう直ぐ夜が明けます。
砂漠の夜がこれほど寒く、神秘的な物だとは思いませんでしたが、それもすっかり馴染んでしまいました。
大尉、貴方は我々を連れて帰ってくれた…と申し上げましたが、実はもう一つお願いがあるのです。
貴方に僕らを連れて、未来を生きて欲しいのです。
今の僕はこの任務の結末を知りませんが、この手紙を手にする頃には貴方がご自身の幸せを見つけ、僕らもその結末に満足していたいのです。
我々が貴方の部下であったことを、貴方の人生の影にしないで下さい。
生きている間、沢山迷惑をお掛けした事でしょう。
僕の昇進の推薦書を書くために、貴方が知り合いの将校へ声を掛けて走り回ったのも知っています。
市街地に取り残されて死にかけた時も、貴方は指揮官ともあろうものが1人で支援に来ました。
だけど、僕らを貴方の人生の誇りにして下さい。
これは僕の我が儘です。呆れるかもしれません。
僕は、最後まで貴方の誇れる部下であったと、そう信じて死にたいのです。
僕は今、無様にも泣いていますが、貴方が我々を思い出す時は泣かないで下さい。
さようなら大尉、そして、これからも宜しくお願いします。
Once a Marine, Always a Marine.
(良くある我々の標語というのは、生涯でなく永遠を指していると信じて)
我が上司であり、仲間であり、兄弟であり、友である
第1海兵連隊第2大隊 E中隊長 寝屋川大尉へ
常なる忠誠を!
先任曹長 バーナビー・ウェンハム
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