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chapter.7-54

*** 砂が舞う。放って置けば肩や髪にさらさらと降り積もるのを、青年は鬱陶し気に2、3度振り払う。 「おめでとう御座います、セフィロス・ネイサン」 ARに麻酔弾を詰め直しながら、マチェーテは賛辞とも思えない賛辞を吐いた。 「すべて貴方の計画通りになりましたね」 生温い、人間の咎のような風を受けながら、セフィロスは窓辺に凭れ、遠い明後日を見ている。 街は数十分前が嘘みたいに閑散とし、少しのPMCが負傷者の運搬などに走っていた。 「トワイライト・ポータル社の壊滅、及び武装勢力との癒着解消…ある種の英雄でしょう、教本には乗りませんがね」 「何の話だ」 「貴方がRICへ接触した件、寝屋川庵を呼び込んだ件、我が上司を煽った件…すべてこの武器供給会社のデリートを狙って働いた行為です」 そう幹部を捕縛させた嚆矢、”フィッピーランド”なる日本拠点の存在をRICへ教えた誘導、クウェート侵攻を目論んでいた船団を御坂に潰させた策略。 要は端からこの男はこの会社を潰す気だった。 どのポイントかは知らないが…我が上司、御坂康祐はセフィロスの思惑に気付き、静観と情報統制に協力した。 ”たまたまPMCが私怨で襲撃した”この本社は、間もなく国連軍が到着して調査に入るだろう。 「このトワイライト・ポータル社は最早貴方の物でない…戦争で金儲けの匂いを知った周辺国が出資し、武器を流す”紛争メーカー”に成り果てていた」 神崎遥は黙って煙草を吸っている。 セフィロスはマチェーテの説明に口を挟むでもなく、静かに最後になりそうな只管青い空を眺めていた。 「関与国のレベルはこれから調査させて頂きますが、貴方のお陰で三次大戦が遅れました。聞くところによれば、我が上司が潰した船団はクウェート侵攻まで計画していたそうですね?」 1991年の湾岸戦争も記憶に新しい。 イラクが石油を求めてクウェートへ侵攻し、結果として…であるが、防衛に入ったアメリカは憎きアルカイダを生むきっかけを作ってしまった。 そんな忌まわしい記憶を嘲笑うかの様に、トワイライト・ポータルは再びクウェート侵攻を目論んでいた。 世界大戦の火種には十分。それほど規模が大きくなり、この会社は最早多国籍軍の様相を呈していたのかもしれない。 「その点は君の上司が即断で空母まで持ち出し、歯向かう気も起きないほど叩きのめしてくれて助かった」 「…正直またキレたのかと思いましたが…いえ、オーバーキルがウチの方針なので。さて、この会社を潰してもまた同じような武器供給組織が出来るでしょうが、暫く時間は稼げそうです。ISILも今回散々な目に遭いましたから、寄り付かないでしょうしね」 「ところで君たちの政権転覆は上手く行ったかい?」 「ノーコメントです、しかし明後日にでもニュースに乗るでしょう」 「答えを言った様なものだ」 「僕はそろそろ失礼しますが…CEO、貴方は下に迎えのヘリが来ているのでご搭乗下さいね、よい旅を」

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