246 / 248

Epilogue.1-6

「その、家とか…お金とか大丈夫?滅茶苦茶お節介な質問だけど」 兄ですらそんな込み入った話はしなかった。社会人としてなのか、性格なのか、確かにお節介な質問へパトリシアの側が面喰う。 「まあ、何とかなると思うし…」 「社長!良いんですか大人が未成年の子を一人で放り出して!」 「え?どうせ御坂がどうにかしてくれるだろ」 「御坂先生に何でもかんでも押し付けない!俺が言えた台詞じゃないけど、御坂先生も忙しいんだから!」 やり合う両者を遠巻きに眺め、自分事なのに口を挟む隙もなく黙る。 パトリシアは手持ち無沙汰に収束を待ったが、適当な雇用主に呆れた萱島がとうとう場を動かす提言を投げてしまった。 「って言うか、うちに来たら良いんじゃないの」 「ん?」 3者の目が一挙に集まる。 当人はその視線に慄きながらも、珍しく撤回はせず手を拱きながら言い訳を並べ始めた。 「ああほら…英語の出来る事務職はね、牧君が欲しがってたんですよ。僕らは今も多大な負担を彼に強いている訳ですし、社長の部屋はどうせ無駄に余ってるしね…」 「まあそうなんだけど、どうなの?和泉くん」 「女性一人ではやり辛い事もあるでしょうが…社長のご親族なら大丈夫では?」 本部には飢えた獣が沢山飼われている。しかし対象が雇用主の妹となっては下手な真似はしかねるし、面倒に拗れて揉める事も無いだろう。 おまけに当のパトリシアちゃんは行方も分からない男に夢中なので、奴らが眼中に入る事は多分ない。 「…ちょっと待って、私の意志は?」 「日本嫌い?ああ、社長が嫌い?分かるよ…でもね、多分その内癖になるから、レバーと一緒で」 「お兄ちゃんはどうでも良いけど、日本って湿気やばいんでしょ?嫌なんだけど」 「お前、御坂みたいな事言うなよ」 また早急に去らねばならないのに、こんな場所で揉めて来た。 結局空港に着くまでに考える、という方向性で落ち着いたが、提案主の萱島は、その生い立ちを良く知る神崎より生温い視線を受けてしまった。 「”うちに”…ねえ」

ともだちにシェアしよう!