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第5話
窓から外を見てみると、そこはテレビでも見たことのない景色が広がっていた。植物の茎や幹は白く、葉も白みがかっている。雪が積もっているわけでもないのに雪化粧をみているようだった。空は太陽が見えないのに明るく、月のようなものが2つ薄い光を放って浮かんでいる。綺麗で幻想的だが、見慣れない風景に違和感を覚える。
俺、死んだんだな、と少しずつ実感がわいてきた。
さびしさを感じたところで馬車から降ろされる。お尻が若干痛い。
そこは小さな丘をくりぬいてできたような家だった。芝生や苔のようなものに覆われ、木製の丸い扉がついている。その左右に小さめの丸い窓が2つあり、丘の上の部分には煙突らしきものがひょっこり生えている。植物に囲まれてなんとも可愛らしい家だ。
中から人がでてきて馬車で運んでくれた人と数分やり取りをして俺に向き直った。
おいで、というジェスチャーをされて家の中に通された。一応振り返ってみたが、馬車はもうなかった。
家主は白い長髪をリボンで一つに結んでいた。白髪だが年は俺より若いかもしれない。透き通るような白い肌に目鼻立ちが整っていて中性的な顔立ちをしている。女の人かと思ったがどうやら男らしい。耳は尖がってないが、背も高くてエルフみたいだなと思った。
その人はルートといった。
一緒に机を囲んでお茶を飲む。お互いジェスチャーなどで意思疎通を図った。
俺は「みとよ」と名乗った。呼びやすいのかルートは俺の事をミトと呼んだ。
寝室やお風呂など案内されて、俺はここで世話になる事を理解した。ルートの家は平屋で大きくはないが一人暮らしにしては広い。かなりの本好きなのかキッチンとトイレ以外は本で埋め尽くされていた。
ここに来てから数週間、ルートは俺に言葉を教えてくれた。
仕事もあるようで時々家を空けたりもしていたが、買い物にもついて行ったりしながら寝るまで暇があればずっと教えてくれた。その甲斐もあり、たどたどしくも少しなら理解できるようになった。子供用の簡単な絵本から初めて読み書きも勉強している。
しかしやっぱりここの言葉は今までに聞いたどの言語とも似つかわしくない。もう少し言葉がわかったら何語がきいてみよう。
ここは水道やガスなどもあり生活の基盤は日本とほとんど変わらない。
違うのは人・食べものや調理方法、通貨、暦の仕組みくらいか。…結構あるな。
死んだのに現世のように生活をするというのも不思議な感じがする。
そういえば以前テレビで、どこかの民族は死んだら隣の島で生まれ変わり、また隣の島で死ぬとこちら側に生まれてくるといった死生観を持つらしい。
あの時はばからしいと思っていたが、スケールは違うがあながち間違っていないのかもしれない。
まぁ何より、仕事に追われないし上司もいない。ルートは優しい、それだけで十分だ。
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