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第6話

この生活にも慣れてきたころ、ある日家主が子供たちを家に連れてきた。 十数人の子供たちは勝手知った家のように中の本をあさり読みふけったり、各自遊んだりしていた。たまにルートが全員を集めて読み聞かせをしていたりした。 どうやらもともと子供たちの世話をよくしているようだ。ここ毎日のように連れてくるようになった。家主は面倒見がいいんだな。 俺はといえば小さい子相手に人見知りをしてしまい、毎回遠くから眺めていることしかできない。子供達の話す言葉は簡単なものが多いので勉強になっている。ルートの読み聞かせをこそっと一緒に聞いているのは内緒だ。 子供たちをみて改めて思う。 ここの人たちは背が高い、その上髪色もさまざまで見たこともない色をしている子がたくさんいる。それも染めたような不自然さがないのできっと天然なのだろう。海外の子は発育がいいだの、いろんな髪色の子がいるのは知っていたがこんなにカラフルだったか? しかし、こんなに小さくして命を落とした子たちがたくさんいるのかと思うと…。 今は無邪気に遊んでいる子供達をみて少し涙がでてきた。俺にも何ができることはないだろうか。 そう思った矢先、小さな泣き声が聞こえた。その元をたどるとキッチンの隅っこで小さく丸まって泣いている子がいた。辺りを見渡すがルートは見当たらない。俺は言葉もまだちゃんと話せないし、どうしたものか… そうだ!と思い立つ。 俺は紙切れをとってきて正方形にちぎって、その子の目の前に持ってきて折り目をつける。 見慣れない人の出現に戸惑って女の子はさらに泣き出してしまった。 あぁどうしよう…上手くいかない。 とにかく急いで完成させて、その子の膝の上に置いた。泣き声が止まり、恐る恐るといった感じで紙でできた鶴をみつめた。俺は後ろから少し空気を入れてやり、羽を動かしてやる。 みるみる驚きの顔に変わりほっぺたが興奮で赤くなった。 また別のものを折る。今度は蛙だ。体の部分を押してやるとちょっぴりジャンプする。ニコっと笑ってその子に差し出すと、その子はその2つを持ってどこかへ行ってしまった。 …まぁ泣き止んでよかったよ。 俺にもできることがあるんだな。 折り紙の折り方覚えていてよかったと俺もキッチンから抜け出す。 するとちょうどルートが子供達を引き連れてやってきたところだった。 みんな俺をまじまじとみている。 な、なんだ。そんなに注目されると会社で怒られていた時のようで思わず背中がひやりとする。視線を避けるため後ずさりしながら別の部屋に避難しようとすると、子供たちに捕まってしまった。 手には先ほどの折り紙をもっており、自分を指さして何かしゃべっている。よくわからないまま机に誘導され紙を渡された。 なるほど、また作れという事か。そんなにバリエーションもないので先ほどと同じものを作る。鶴と蛙。俺が指を動かしているのを20個以上の目玉が見つめている。き、緊張する。 そして完成するたびに歓声があがる。ルートも子供たちと同じような表情で俺をみていた。 それから俺は折り紙製造機になり、たくさん折った。 子供たちは出来上がったもので遊んだり、俺の真似をして一緒に折ったりした。苦戦したりしていると、俺のほうを泣きそうな顔で見つめてくる。か、可愛い…。

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