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第8話
長い間馬車に揺られた。寂しさと不安で外を見る元気もないので、どの方向に向かっているのかわからない。まぁみてもどうせわからないけど。
俺にとっての天国をみつけたと思った矢先だったので実は結構こたえている。
子供達は最後見送りに来てくれて、泣き出す子達もいた。俺は一人一人とハグをして折り紙を手渡した。我慢していたが、子供達の事となると涙腺が緩んでしまう。馬車に乗ってからついに泣いてしまった。
これからどこに連れていかれるんだろう。
ようやく言葉がわかりはじめたとはいえ、ルート以外の人とは安心して話せない。言葉が通じないことが結構なストレスになっていた。
こんなに遠くまで来てしまって、本当にまたみんなに会えるのだろうか。ルートはああ言ってくれたけど、本当は迷惑だったのかもしれない。
いや、いかんいかん。働かざる者食うべからずだ。今までが彼に甘えすぎていたのだ。見ず知らずの不審者を世話して言葉まで教え仕事場まで与えてくれて、ありがたい。どんな仕事でも頑張ろう。そしていつかお金をためてお礼に行こう。
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それから半年がたった。
連れてこられたのは農家だった。なるほど、ここなら言葉が不自由でも働けると納得した。
流石ルートだ。
やったことはなかったが俺はがむしゃらに働いた。今までがオフィスワークだったので体力もなく最初は使い物にならなくて、居候先の子供によくからかわれた。
少しずつ体が慣れてきて、不健康に白かった肌は小麦色になり、一人である程度のことはまかせてもらえるようになった。
家には老夫婦とその孫が住んでいて、その離れにある小屋の2階に住まわせてもらっている。
初めはあまり好意的ではなかったが、徐々に頑張りが認められたのか心を開いてくれている。
食事などは別で、シャワーだけ借りに行くが基本的に自炊をしている。現世に似た食材を探しては、日本食もどきを作るのが趣味になっていた。
暇があれば孫のシオンが俺にかまってくれるので、言葉もそこそこ上達してきた。
それにルートにもらった本や、シオンの学校の教科書で大体この世界の事を知ることができた。
この世界には他にいくつも国があるようで、地図をみるとかなり広い。そしてこの国では王政をとっているらしい。死後の世界に王様というのも不思議な話だ。それは閻魔様なのだろうか、それとも神様?
一度、シオンに「生きていた時は何をしていたか」を聞いてみるとびっくりした顔をして熱でもあるのかと心配された。
もしかして、みんな自分が死んだことを覚えてないのかもしれないなと思った。
誰も生前の事を話さないので、俺も黙っていることにした。
そしてどうやら俺は記憶喪失になった人という事になっているらしい。何が変わるわけでもないのでそのままにしている。
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