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第10話

「ミト」 それからしばらくたって、懐かしい声をきいた。 あれ、この声… 「ミト、よかった」 振り返ると風になびく綺麗な白髪がみえた。今日は髪を縛ってないらしい。 「る、ルート!」 俺は思わず用具をその場において駆け寄った。 「ごめん、遅くなってしまって。」 ルートが申し訳なさそうにほほ笑んだ。なんだか以前より元気がない。目の下に隈のようなものがうっすらとみえる。 「ううん、来てくれてありがとう。あ、上がって」 俺は住んでいる小屋に案内しようとしてやめた。ルートは純白の繊細な刺繍の入った白いローブを羽織っている。 住んでいる小屋の一階は物置、住居にしている2階までは梯子で登らないといけない。 「あ…と、ちょっと部屋汚くて、」 「お構いなく。元気な顔が見られてよかった。言葉、上手くなったね」 「シ、シオンが教えてくれて。」 「そう。ここでの生活も楽しんでいるみたいだね。…本当に良かった。」 それから俺たちはルートが乗ってきた馬車の中で少しだけ近況の報告をしあった。 話ながら彼に分けてもらった紙で折り紙を作り、子供たちにと渡す。俺は懐かしさと嬉しさで少し涙ぐんでしまった。俺も折り紙と、ルートと一緒にみんなに会いに行けたら。 「ありがとう。子供達も喜ぶよ」 「こちらこそ、今日は本当にありがとう。嬉しかった。 今度来るとき、俺みたいな恰好で来て。そしたら料理作る」 「わ、それは嬉しいな。楽しみにしているよ」 30分も滞在せずに帰ってしまった。もしかしたら仕事の合間だったのかもしれない。 でも今日はいい日だ。もう会えないと思っていた。 もしかしたら子供達にもまた会えるかもしれないな。

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