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第11話

それから月に1度か2か月に1度の頻度でルートが遊びにきた。 以前の約束通り、今度は汚れてもいい服で。 来るのは決まって夕方、夜遅くなる前には帰ってしまう。 俺は毎回お手製の日本食もどきを振舞った。 「うわ、美味しい。これなんていう料理?」 「これは肉じゃがでこっちはトマトチキン」 「ねぇー僕あの黄色いやつがいい」 今日はシオンも一緒だ。シオンのお気に入りはオムライス。肉じゃがオムライスといっても本当にエセ料理だ。食材も全く違うし、もちろん醤油もケチャップもない。いつかシオンに本当のオムライスを食べさせてやりたい。 「わかった、今度。野菜も食べる」 そう言ってお皿の端によけられた緑色のものを真ん中に戻してやる。 「えぇー!」 「これ食べないと、大きくなれない」 「いいもん別に。みとよよりは絶対大きくなれる自信あるし」 「そ、それは」 こっちにきてから身長がコンプレックスになってきた部分もあり、正直耳が痛い…。 ここでは女性のほうが俺より身長が高いくらいなのだ。 「ふふ、ミトはそのままで素敵だよ」 ルートが俺の心を読んだようにフォローしてくれた。 ありがとう…俺にはルートが聖人に思えてきたよ。 「ルートと結婚する人は幸せだな」 思わず口から洩れた。いいよな、こんなお嫁さんが欲しかった。 「あはは、どうしたの。」 「みとよ結婚するの!?」 結婚か。現世では無理だったが今なら…っていやいや!快適すぎて忘れそうになっていたが死んでる身だ。死後の世界にも結婚制度があるのか。まさかの死後結婚?みんな死んでいることを忘れているようだから結婚もできるのか? 「みとよは結婚なんてしないでしょ!ずっとここにいるでしょ!」 考え込んでいるとシオンが飛びついてきた。 「わ、わからないよ。もしかしたら」 「じゃー相手連れてきなよ」 ぐ、言い返せない。俺は胸を押さえながら食器を片付けに入る。 夢を見るくらいいいじゃないか。 「じゃあ、今日はありがとう」 ルートを馬車まで送る。 「なんか騒がしくしてごめん」 「ううん、楽しかった。…そういえばさっきの話だけど、ミトは結婚とか考えているの?」 さ、さっきの話題まだ引っ張るのか! 「できればと思っているけど」 思わず遠い目をしてしまう。まぁ無理だろう、記憶喪失ってことになっているしな。 「…みとよならきっと大丈夫だよ。じゃあね」 そういってルートは帰っていった。

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