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第20話
すれ違いに入ってきた人に連れられ、寝室に案内される。どうやら今日はこのまま休んでいいようだ。俺は部屋に入るや否やベッドに倒れこんだ。結局、ルートに会えなかったな...
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コンコンという控えめな音がする。
ふかふかの布団に手触りの良いシーツ。柔らかい日差しで意識が少しずつ覚醒する。
めちゃくちゃ心地いい。二度寝したい...と思ったところでベッドから飛び起きた。
見慣れない部屋に慣れない感触で一瞬頭が混乱する。昨日の夜の記憶が無い。疲れすぎてあのまま寝てしまったようだ。倉庫から連れてこられた事を思い出すと、ノックに応えるため慌てて扉を開けた。
昨日お世話をしてくれた人達に言われるがまま朝食を取り、服に着替える。
上下に分かれている服の上に、ルートが羽織っていたようなローブを肩にかける。無地だがよく見ると細かい刺繍が施されている。肌に触れる部分は柔らかく心地いい。それに見た目より軽いのもあり、ファッションに疎い俺でも高級なものだとわかる。汚したらまずい...よな。思わず体に力が入った。
気になるのは用意された服が全身黒に統一されているという事だ。嫌いな色というわけではないが、かっちりしているデザインも相まってまるで葬式だ。い、嫌な想像をしてしまった。
自分の葬式にならない事を願う。
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色々な想像をしたが、どうやら俺は殺されるわけではないらしい。
やうやうしい格好をして通された部屋には、俺と同じような格好をした初老の人達がいて状況を説明してくれた。
聞いたことのない専門用語が多くて全部を理解するのは難しかったが、あらかたわかった.。
まず連れてこられたのは王宮のある街、言わば首都のようだ。俺が住んでいた街は最南端で隣国との国境に近いところだった。地図で見せて貰ったがかなり距離がある。馬車でお尻も痛くなるはずだ。
それでどうして俺がここに連れてこられてきたかというと。
こちらでは「オーズ」という国を繁栄に導く存在があるらしい。それは忽然と現れ人々に知識与え正しい道を示すとされており、出現するタイミングはわからず数十年に一度の時あれば百年以上現れない事もあるらしい。
だいたいは国がどうしようもなく荒れている時に現れるので、言わば救世主のような存在のようだ。
そしてこの国ではここ数十年、災害や干ばつが続き農作物が育たず人々は苦しい生活を余儀なくされ、内乱や他国との問題もある中、次の王もなかなか決まらずといったところで何年も救世主を待ち望んでいたようだ。
その救世主っていうのが、どうにも理解しがたい事だが、決まって黒髪をしているらしい。
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