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第24話
「今度、みとよを僕の家族に紹介したいのだけど、いいかな?」
美丈夫にそうお願いをされて断るなんてできない。会う約束をしてルートと別れた。友人の家族会うというのも不思議な感じがするが、黒髪が珍しいのだろう。
家族、家族かぁ。
日本の家族よりも先にシオンの顔が浮かんだ。今頃シオンはどうしているだろう。こちらに連れてこられてから自分の事でいっぱいいっぱいになっていたが、俺の事はどう説明しているんだろう。あいつ、泣いていないといいが。友達も少ないし、一人で大丈夫だろうか。
とりあえず殺されないと分かったことだし、また働いてお金が貯めよう。そうすればまた会える機会も作れるはずだ。稼いだお金も荷物も全部置いてきてしまったので時間がかかるかもしれないけど。もし可能ならば先に手紙を出すのもいいかもしれない。そうだ、今度ルートに会ったらお願いしてみよう。きっと急にいなくなってびっくりしているだろうから。ちゃんと伝えなくては、俺が大切に思っている事を。
――――――――――
その日は思ったより早くやってきた。
また以前と同じような全身真っ黒な服を着せられ、今度は頭に華奢な冠を乗せられる。あれ、ルートの家族に会うだけだよな。それともこれがこちらでの作法なんだろうか。普通に友達の家に遊びに行く感覚でいたが、こんなに仰々しくなるなら断ればよかったと後悔をし始めた時だった。バタンと大きな音がさせてケネスが入ってくる。俺をみて少し驚いた表情をさせた後、全身をみて「孫にも衣装だな」とボソっとこぼす。
聞こえない振りをして「あの、ルートは」と聞く。
「あのお坊ちゃまは来ねえよ。俺が代わりにわざわざ迎えにきてやったんだ。」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
「時間ないんだ。さっさと行くぞ」
「え、あ、待っ」
心の準備が…
こちらの静止も聞かず出て行ってしまった。お、追いかけないと!見失ったらまた迷子になってしまう。慌てて走って廊下にでると、意外にも待っていてくれた。
「みっともないから走るんじゃねぇ」
そういってまたズンズンと先に行く。走るなと言われても足の長さが違うのでどうしても小走りになってしまう。案の定、丈の長い服を踏んづけてつんのめる。た、倒れる!と身構えたが、予想した衝撃はなく逞しい腕に支えられていた。
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