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第26話
頭を上げた時、誰かと目があう。不思議と目が反らせず、男性が再び喋り始めて我に返るまで見つめ合ってしまった。向こうは話を聞く側だったからこちらに目を向けていただけなのに、失礼な事をしてしまった。しかし数秒間目が合っていたはずだがもう顔を思い出せない。こ、これが老化ってやつなのか...。
1人で反省会をしているといつのまにか話は終わったようだ。今度は女性から花が入った籠を渡されて、白いローブを着た列の端に誘導される。後ろについてきた女性が人の名前を呼ぶと、目の前にいた人が少しだけ頭を下げた。どうやら家族の紹介をしてくれているらしい。先程説明があったのだと思うが俺には伝わっていないので流れがわからず戸惑ってしまう。綺麗な女性だった。白い肌に白い服を身にまとい女神のようだ。こんな人が姉や妹だったら最高だ。ルートが羨ましい。俺も見惚れながらつられるように頭を下げる。
...ん?それでどうしたらいいんだ?
前の人も喋らないし、紹介は終わったのだろう。しかし一向に次の人の紹介が始まる気配がない。無言の時間が過ぎていく中で、周りの緊張感が伝わってくる。チラリと周りをみると皆の視線が痛い。く、空気が重い!気づくと目の前の女神の唇が震えている。きっと俺が何かしないといけないのだろうが検討もつかない。女神を泣かせたくはない、しかしトンチンカンな事をしてルートと家族の前で粗相をする訳には...。あぁ、こんな事ならわからないなりにきちんと話を聞いておくんだった。俺はいつもそうだった...肝心なとこれでいつも...と2回目の反省会を始めたところで籠の存在を思い出す。花か!!
慌てて白い花を女性に差し出すと、ホッとした顔をして受け取ってくれた。そして次の人の紹介が始まる。よかった、合っていた。俺も胸を撫で下ろした。
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