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第30話
ールート視点ー
「オーズ様に間違いなどあるものか」
「疑うとはなんと無礼な」
「しかしユーイアン様は後継者としての教育をされていない」
「半分とはいえ平民との子供など」
「いくらオーズ様の導きとはいえ即位させることはできない」
「それでは数千年と続くオーズの守りを裏切るというのか」
僕の思いとは裏腹に、賛同できない者たちの声が多くあがる。さっきから話が堂々巡りで進まない。しかしどんなに話し合ったとてオーズの決断は絶対だ。誰もが想像していなかった事態に一向に収拾がつく気配がなかったが、次の一言で場が静まり返った。
「オーズ様は間違いをおかすことはない。だが我々がオーズ様を間違えたのやも知れぬ」
「そ、それは一体どういう事か」
「女中が話していたことだが、この度のお方は髪色が半分黄金色だったというではないか」
「それはまことか。しかし先ほどお目にした時にはそれはそれは美しい黒髪で」
「間違いない。断髪された後の御髪を女中隠し持っていたのをこの目で確認した。後で持ってこさせよう」
「毛色を偽わるなど、そのような事が可能であるというのか」
「髪色の染色など聞いたことがない」
「かの世界の技術は未知だ。何事もあり得るだろう」
「それではあのお方はオーズ様ではないという事か」
「オーズ様を騙るとはなんという無礼者!」
「確かに染めたとおっしゃられました」
不穏な流れに思わず大きな声がでてしまった。
「おぉ、ルート。そのようであったか。それでは彼はやはり」
「しかし、染めたのは黄金色にであって素は黒髪だとも」
「もしそれが本当であったなら、神聖な黒色をなぜわざわざ染める必要がある」
「オーズ様にも事情があったのでしょう。彼は被り物で黒髪を隠していたくらいです。それにモシェに連れ立った時、案内せずとも異界の植物へ駆け寄っておりました」
「そんなことフリだけなら誰だってできる」
駄目だ、生まれた疑念はぬぐいきれない。ごめんミト、と心の中で謝る。
「そこまでおっしゃられるのならお調べになられたらどうです」
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