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第31話
みとよ視点ー
部屋を移ってから一か月が経つ。広さは以前の3分の一くらいの大きさで、窓も丸く小さいものが2つだけ。装飾品も減って随分とシンプルになった。俺にはそれでも十分すぎるほど立派だったが、部屋を移る時にルートにしきりに謝られた。「僕のせいなんだ」と言っていたが経緯はよくわからない。でも今までの部屋だと豪華すぎて落ち着かなかったので助かったくらいだ。
トイレやお風呂はすぐ隣の部屋にあるし、食事も持ってきてくれる。衣食住には困ることはない。ただ以前と違うのは室内につねに誰かいることと、外へ出ようとすると止められてしまうことだ。プライバシーは皆無。尚且つ軟禁状態だ。監視をされているようで落ち着かないし、何より気まずい。気分転換に外に出ることもできず、逃げ道がないのは正直堪えた。けれど甘んじて受け入れるしかない。ルートは気を遣って伏せてくれているが、きっと俺が気づかぬ間に失態をしてしまったのだろう。
その証拠にここで過ごすようになってから毎日朝と夜、ピンセットのようなもので体の毛を抜かれる。その時によって睫毛、腕毛、髪の毛だったりとさまざまだ。拷問に比べたら何千倍もマシなのでいくらでも差し出すが、できたら髪の毛は控えてほしい。特につむじあたり。
そんなわけで、この閉鎖的な空間で俺は暇を持て余していた。最初の頃はルートに紙とペンをもらいシオンに手紙を書いたり、借りた子供向けの本を読んで過ごしていた。しばらくそれでしのいでいたが、一週間もしたら飽きる。ルートも頻繁に来れるわけじゃないので同じ本を何度も読み直した。農業でせっかくついた筋肉もあっという間に落ちた。筋トレをしようにもヒラヒラした服を汚せないし、前に我慢できずにお風呂場でスクワットをしたら監視の人に取り押さえられてしまった。怪しい動きはするなという事らしい。
この生活はいつまで続くのだろうか。1か月、1年、10年、死ぬまで?発狂するのが先か、はたまた処刑されるのが先か。時間だけはたっぷりあるので悪いほうに考えてしまう。
そんな中、俺にも楽しみができた。
来客が増えたのだ。
不安な気持ちをやわらげ希望を与えてくれる、その人はいつも夜にやってくる。
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