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2-F
「何突っ立ってキョロキョロしてんだ?」
「!!」
後ろから声をかける佐久間とそれにびっくりする俺。
只今、午後4時48分。
いつの間にか、部屋に入っていた佐久間。
音もなく入ってきたら、ビビるじゃないか!
佐久間の手には、紅茶とお菓子をのせたお盆。
「とりあえず座れよ」
「う、うん」
佐久間は、部屋の真ん中にあるテーブルの上にお盆を置いて、俺に座るよう促す。
な、何だそのアフタヌーン的なセットは!
「何で正座?」
「何となく?」
「足崩していいよ」
そんな事言ったって、そんなん持ってこられたら、正座するぐらい緊張するさ!
ってか、佐久間の家に来てから、緊張しっぱなしだよ!
「キッチン探したけど、チョコとクッキーぐらいしかしなかったわ」
チョコとクッキーぐらいって……、カカオの絵が書いてるその箱、絶対高級チョコのでしょ!
それを"ぐらい"扱いって!
「いやいや、逆にこないだウチに来たとき、全然オシャレおやつじゃなくて、申し訳だよ」
ウチの家に来る前に、コンビニでブラッ〇サンダーとか買ってた自分が恥ずかしい。
いや、ブラック〇ンダーは美味いよ!ブ〇ックサンダーは悪くない!
悪くないんだけど、普段高級チョコを食べている佐久間に出したのは、ちょいと恥ずかしい。
「オシャレおやつって何だよ」
笑いながら、手慣れたようにポットの紅茶をカップに注ぐ佐久間。
「さ、佐久間は、普段から紅茶飲むの?」
「うーん、割とよく飲むかな。母親が紅茶好きだから」
「な、何か、本格的だね」
「そうかー?あ、ミルクがなくて悪いけど、砂糖はどうする?」
「一つお願いします」
「はい、どうぞ」
佐久間は、ソーサーまでセットされたティーカップを俺の前に置いた。
「い、いただきます」
すでにいい香りを漂わせている紅茶に口をつける。
「わぁ、美味しい!」
普段あまり紅茶を飲まない俺でも分かる美味さに、思わず声をあげると、
「そりゃ良かった」
嬉しそう笑いながら、自分の紅茶を口に運ぶ佐久間。
その流れるような所作に、また"俺の知らない佐久間"が見える。
…佐久間から目が離せない。
ゆっくりと口元からティーカップを離す佐久間。
紅茶に濡れた佐久間の唇を見て、ドキッとする。
「ちょ、チョコもらうね」
そんな自分にハッとして、高級チョコに手を伸ばす。
持っただけで、簡単に溶け出す高級チョコ。
慌てて口に入れる。
高級チョコだけあって、複雑な味。
甘いけど酸味があって。
甘いけど苦味もあって。
美味しけど食べなれない味。
とりあえず、勿体なくて、指についチョコをペロっと舐めた。
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