9 / 31
5-F
「いただきまーす」
「いただきます」
手を合わせて、食事の挨拶をする俺たち。
只今、午後7時17分。
今夜のSAKU’Sキッチンは、玉ねぎのアーリオオーリオと彩りサラダ!
ダイニングテーブルに向い合せで座った俺たち。
出来たてのパスタは、まだ湯気が立ってて、お腹の虫を誘う香りを漂わせている。
くるくるっとフォークに巻いて、ぱくり!
「うん、美味しっ!」
オリーブオイルをこんな贅沢に使うのは、も〇みちさんと佐久間ぐらいだよ。
「にんにくあんま使わない代わりに、玉ねぎ多めに入れたからどうかと思ったけど」
「ううん。玉ねぎが甘くて、すっごく美味し!」
「ありがと」
佐久間の柔らかい眼差しに、照れてしまう。
"可愛いのは罪"とは、このことを言うのですね。
「と、ところで、ご両親がお仕事って言ってたけど、何のお仕事してんの?」
「父さんはパイロット。母さんは元CAで、今はそれ系の専門学校の講師」
「えっ、パイロットって…、もしかしなくても国際線?」
「ああ」
通りで、あんなオシャレお菓子が出てきたわけだ。
「お父さんがパイロットとか…、いいなぁ。俺だったら、絶対自慢する!」
「そうか。家だとフツーのおっさんだよ」
「あ、写真とかないの?」
「あー、まーあるけど…」
「後で見せて!」
「んー後でな」
「出来れば、制服と飛行機がセットのやつ!」
「だいぶ限定的だな」
「えー、だって、パイロットの制服カッコイイじゃん!空港でみる、小脇に帽子を抱え、コロ引っ張りながら颯爽と歩くパイロット…。男の子の憧れだよ!」
「へいへい」
「佐久間はお父さんみて、パイロットになりたいとか思わないの?」
「考えたことねーな」
佐久間が、パイロットか…。
「…へへ」
「何、ニヤニヤしてる」
背が高くて脚も長いから、制服似合いそう。歩く姿が様になるんだろうなぁ。
今みたいに、みんなから頼られるのは確実だよ。
「いやぁ~、佐久間のパイロット姿想像したら、ちょーカッコいいなぁと思って」
「……」
普段はキリッとしてるけど、子ども達が寄ってきたら、なっちゃんのときみたいに、屈んで頭撫でたりするんだろうなぁ。
もちろん、少年のような笑顔で。
「それに、佐久間優しいから、きっと子ども達の憧れの的になるよ!」
「……」
ん、佐久間黙ってるけど、俺、何か変なこと言ったかな?
「佐久間?」
ん、佐久間、顔が赤い?
そう思っていると、口元を手で押さえて、プイッと横を向いた佐久間。
「何でもねーよ」
ウソだ。
だって俺、佐久間の"何でもねー"その仕草に、何でもあるくらい胸が高鳴ってるから。
ともだちにシェアしよう!