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6-S

「ごちそうさま」 「ごちそうさまでした」 手を合わせて食事の終わりの挨拶をする俺と藤。 只今、午後8時12分。 腹をポンポンと両手でたたく藤。 胃袋はがっちり掴めたようだ。 カチャカチャと器を寄せて立ち上がる藤。 「藤、そのままでいいよ。後片付けはしとくから」 俺は、藤が寄せた器をヒョイと持ち上げた。 「それより、先風呂入って」 俺がそう言うと、 「……」 若干、固まった藤。 「バスルームにある入浴剤とか勝手に使っていいからな」 「……」 緊張してんなぁ。 「あ、着替えはあとから持ってくから、今着てる服も洗濯機ん中いれといて。後で回すから」 「…はい」 逆に、俺は、ちょっと楽しみなんだからな。 軽く水洗いした食器を食洗機に入れる。 「あとは…」 藤の着替えの用意。 「ヨシッ」 逸る気持ちを抑えつつ自室へ。 「確か、結局履かなかったのがあったよな」 クローゼットを探ると、 「…あった、あった」 中3で急に成長期をむかえ、入らなくなった未使用のボクサー。 俺の下着というのも捨てがたいが、体格が違いすぎる。 デカいサイズは、履く方としては落ち着かないだろう。 「あとは…」 寝間着なんだが、俺はスエット派。 一瞬、父さんのパジャマが頭をよぎったが、すぐさま却下。 まぁ、ぶかぶかな俺のスエットを着た藤もいいかもしれない。 揃えた着替えを持って、バスルームに向かう。 「ふう…」 洗面所の入り口でため息ひとつ。 音を立てないように、ゆっくりと扉を開ける。 ――シャーーーーー―― "落ち着け!"と自分に言い聞かせながら、シャワーの音がする方を向く……が、湯気でよく見えね! 洗面所の棚からバスタオルを取り出し、ゆっくりバスルームに近づく。 ――キュッキュッ―― カランを締める音。 まだ、俺に気づかない藤。 雫の落ちる髪を両手でかき上げる。 くるくるの天パが後ろに撫でつけられ、火照った愛らしい顔がしっかり見える。 湯気から垣間見える、白い細身の濡れた身体。 ゴクリと唾を吞む。 そして、上半身から目を下に落とそうとしたとき、 「…へへっ」 藤の笑い声にドキッとした。 覗き見、いや、がっつり見がバレたのかと思い藤の顔を見た……が、やはり気付いてない。 いつものだらしない顔で笑っていた。 その顔を見ると、すこし落ち着いた。 ――コンコン―― ガラスをノックすると、 「さ、佐久間!?」 バッと藤がこっちを向いた。 「…着替えとタオル、ここに置いとくから」 なるべく目線を落とさないようにする。 「あ、う、うん。ありがと…」 サッと目を逸らした藤。 白い肌が、みるみる赤くなる。 「……」 「……」 その反応はやめろ! また、落ち着かなくなる! 「…じゃ、しっかり温まって出ろよ」 少しの変化も悟られないように、洗面所から出た。 「…ヤバい」 思わずバスルームに入りそうになった。 バスルームに入って、驚く藤を、そのまま……。 そう、俺はそのまま、トイレに駆け込んだ。

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