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7-S
「さ、佐久間、お風呂、ありがと…。お次、どおぞ」
「……ップ!」
おずおずと佐久間の部屋に入る藤と堪えきれず笑ってしまった俺。
只今、午後8時44分。
大きめサイズは可愛く見えるというが、あまり大きすぎると、可愛い通り越してダサいな。
俺のスエットを着た藤は、俺が思ってたイメージとは全く違った。
上は、肩の位置が下がり、袖はおばけの真似をするときのよう。
下は、ウエストはブカブカすぎなのか、手で押さえている。裾は二重折り。
色気も素っ気もねー。
「ウケるな」
思春期男子の期待を返せ。
「笑うな!」
「ごめん、ごめん」
とりあえず、口先だけは謝っておこう。
「藤に合うサイズがなかったんだから仕方ないだろ」
まだ腑に落ちない顔してんな。
ん、もしかして…。
「あ、下着のサイズは大丈夫か?」
「う、うん。ピッタリだけど…」
「成長期前に買ったやつ、使わないままだったから。ちょうど良かったわ」
そっちが気になってたんだな。
「コレ」
「?」
当たり前のように俺の隣に腰を下ろした藤。
ふわっと香る、俺と同じ匂い。
「写真、見てえって言ってたろ。俺が風呂に入ってる間にでも見とけ」
思春期男子の期待がぶり返す。
「ハーッ」
冷たいシャワーを浴びて、ぶり返した熱を冷やす。
身体的には寒いが、そんなのお構いなしだ。
ダサい格好でも、俺を誘う藤。
「無意識なんだろけど…」
ひとり言をぼやいても、シャワーの音とともに消える。
早く、この篭る熱も消えてほしい。
そうじゃないと…。
「クシュン!」
……風邪をひく。
「…うん、無理だ。もう出よう」
一瞬だけ熱めのシャワーを浴びて出る。
「ふぇ?」
自室の扉を開けると、藤のすっとんきょうな声が聞こえた。
覗いてみると、アルバムのフィルムをはがし、とある一枚の写真を、不思議そうに見ていた。
もしかして…、あ、アレは…。
「…佐久間?」
……"女の子"の写真か。
「…ご名答」
俺の声にビックリしたのか、バッとこっちの方を向いた藤と目が合う。
「…よく見つけたな」
そんなクソ恥ずかしい写真を。
まぁー、何故か捨てずに取ってた俺も俺か。
「どうだ、可愛いだろ?」
そう言って、俺と同じ匂いのする藤の横に座る。
「う、うん。ちょー可愛い…」
写真の中の女の子 のように赤くふくれる藤。
藤、早くそのアルバム閉じてくれないか?
写真 の俺に、これからの俺達を見せたくないから。
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