＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ あ、佐久間がピアノ弾いてる！ ピアニストの佐久間は、これまたカッコいい。 鍵盤をみる横顔が綺麗だし、鍵盤の上をうごく手も素敵だし、何よりピアノに対する気持ちが溢れんばかりに伝わってくる。 ピアノを弾く佐久間に近寄る。 アレ？ いつもは直ぐに気付くのに、今日は気付くてくれない。 ヒョイと、佐久間の膝の上にのる。 あ、やっと目が合った！ 嬉しくて笑顔になる。 でも……、 直ぐ、ピアノに戻る。 みんなが知らない、素敵な顔が、綺麗な字を書く手が、何より俺に対する気持ちが、全部ピアノに注がれる。 さっきまで好きと思っていた事が、嫌いになる。 俺を見てよ、佐久間！ そう言おうと思い見上げたが……、佐久間がいない。 ん、俺、佐久間の膝に乗ったよな？ いつの間にか、佐久間もピアノも消えていた。 佐久間？ キョロキョロと佐久間を探す。 佐久間！ 遠くに見えるのは、佐久間と昼間に見た少年。 でも、遠くからでも分かる。 佐久間の表情、佐久間の動き、佐久間の雰囲気。 みんなが知らない、素敵な顔が、綺麗な字を書く手が、何より俺に対する気持ちが、全部……。 ダメ！ 佐久間の横は、俺の場所だから。 その場所は俺のだから。 近づこうと一所懸命走るが、佐久間と少年は遠のくばかり。 待って、お願い！ 取らないで！ 俺の大好きな場所、取らないで！ ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊