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11-F

「……ゆ、め?」 夢から目が覚めた俺。 只今、午前1時22分。 よかった……。夢だった……。 「嫌な夢見たなぁ…」 布団に潜り込み、佐久間の匂いを嗅ぐと、少し気分が落ち着いた。 再び布団から顔を出し、床で眠る佐久間を見る。 夜空が晴れているのか、薄いレースカーテンから妙に明るい月明かりが、佐久間を照らす。 「……」 ウチに泊まった日の朝に見た顔。 布団から起き上がり、床に足を下ろす。 佐久間を起こさないように、ベットから立ち上がり、ゆっくりと佐久間の顔の横にしゃがみ込む。 「スースー」 少し開いた口から漏れる寝息。 "ペロ" 無意識だった。 "ペロ……ペロ……" 少しカサついた唇を潤わせたくて、何度も舐める。 無意識だった行為が、意識的な行為になる。 「ん"ん…」 起きたかと思い、舐めるのを止める。 「スースー」 身じろぎはしたものの、やはり寝息を立てて眠ったままの佐久間。 「…起きない」 再び佐久間の唇に近づく。 "くちゅ" 今度は、佐久間の下唇を軽く噛む。 "くちゅ、くちゅ" キスなんてしたことない。 こんな、誰かを欲してするキスなんて。 あの映画のキスシーンを思い出す。 ついばみじゃれるような子どものキスじゃない。 舌を絡め激情を流し込むような大人なキスでもない。 あの、ゆらゆら揺れるような、不安に満ちたキス。 そう、不安なんだ。 確かに同じ気持ちなのに、それは一瞬だけのような気がして。 "ちゅ、くちゅ" 起きない佐久間をいいことに、何度も何度もキスをする。 自分の気持ちを確認するように、何度も何度も。 「……さ、く、ま」 思わず名前を呼んだ。 その瞬間、 ガサッ!! 佐久間の顔ごしに天井が見える。 俺が佐久間を覗き込むような体勢だったのが、いつの間にか佐久間が俺に馬乗り状態に。 何がどうなったのかよく分からないでいると、 「……藤」 佐久間に名前を呼ばれた。 「藤」 も一度名前を呼ばれ、佐久間の顔にピントを合わせる。 「……呼んで」 佐久間の瞳と目が合う。 「……"佐久間"って」 俺を映すその瞳は、ゆらゆらと揺れていた。 あぁ、そうだったんだ。 君も不安だったんだね。 「……佐久間」

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