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第11話

今日の1限目は、授業変更で美術。 果物のデッサン。 もちろん、ももチャンと席を並べ、デッサンそっちのけで雅実についての会合。 「事の始まりは、雅実君が寺島君に教科書を見せたことのようで…」 「事の始まりって……、コレ、2時間ドラマ?」 「雅人、茶化さないで」 「ハ、ハイ…」 すっごい真剣なももチャンだけど、俺からしたら、ももチャンの方が雅実で遊んでる気がするんだけれども…。 ただ、そんな命取りになるようなことは言わない、言えない。 「雅実君と寺島君は隣の席で、教科書を忘れた寺島君に、雅実君が教科書を見せてあげて、そこから仲良くなったみたい」 「ふーん。でもそれって、別によくあることじゃん?」 「そういう何気ないことから恋ははじまるものなの!」 「そ、そうですか…」 も、ももチャン、圧が凄いよ…(汗) 「で、寺島君が雅実君を気に入って、よく話しかけてて。休み時間はもちろん、授業中も事あるごとに雅実君に話しかけてるようよ」 「まー仲が良い友達なら別にフツーじゃん」 「そうね。ただ、相手は人気者の"寺島晶"よ。周囲が放っておかないわ!」 キラリと光るももチャンの目を、俺は見逃さなかった。 「え!?もしかして、雅実そいつらにいじめられてるんじゃ…」 「いいえ、その逆よ」 「へ?」 「"人気者の寺島と、最近やたら仲が良い佐々木雅実ってどんなヤツだ!?"ってなって、雅実君に人が殺到。見た目は取っ付きづらいけど、根っからのお兄ちゃん気質で優しい雅実君だから、話してみたらみんな雅実君に首ったけ!逆に、雅実君をひとり占めしてる寺島君に、みんなが大ブーイング!」 「良かった、雅実がいじめられてなくって。でもそれが、雅実の様子が最近おかしいのと寺島に恋してるに、どう繋がるの?」 「そ・れ・が。雅人が言ったとおり、雅実君の様子がおかしいのは寺島君に対してだけなのよ!」 「はぁー」 「だ・か・ら。友達が沢山出来たにも関わらず、その子達には"いつもの"雅実君なのに、寺島君にだけ"おかしな"雅実君なのよ!雅実君が寺島君を意識してるとしか考えられない!そう、雅実君は恋してるのよぉ~~~!!」 「ちょ、ちょっと待って!」 また別世界へ旅立とうとしてるももチャンを、慌てて引き戻す。 「何よー、雅人ー!」 俺に、別世界へのフライトを邪魔されて、ムッとしているももチャン。 ももチャン、そんな怒った顔もキュートだよ! ……って思ってる場合じゃなくて。 「それだけで雅実が寺島に恋してるって、なんだか信憑性に欠けるんですけど」 「これだから、お子様男子は」 「ぶー。お子様男子で悪かったねー」 「もう、不貞腐れないのぉ」 「だってー」 「"だってー"じゃないのぉ」 ふくれっ面の俺の頬に、人差し指でツンツンするカワイイももチャン! ホント、そんな笑顔でツンツンしない! もうー、ちゅーしちゃうゾ!! なーんて思ってたら……、 「って、話戻すわよ」 「ふぇ、ふぇい」 グサッっと、おもっきし人差し指をブッ刺してきたデンジャラスビューティー。 「雅実君が、寺島君の距離感の近さに戸惑ってるだけって発想も分からなくないわ。でも、もう友達になって1ヶ月は経ってるのよ。そろそろ"その"近さに慣れてもよさそうじゃない?」 「た、確かに」 「それに、いくら雅実君が優しいからって、苦手な人が自分のパーソナルスペースに入ってきたら嫌がるでしょ。現に去年、やたらボディタッチ多めで言い寄ってきた女子に、雅実君そーとー困ってたじゃん。あの紳士で優しい雅実君が、はっきり"嫌だ"って言ったんだよ」 「う、うん」 「もちろん、男子と女子で違うからって言えばそれまでだけど。でも、男子でも好きな子じゃなきゃ困ってると思うし、はっきり拒絶すると思うよ、雅実君は」 「するね、絶対」 「きょどりながらも楽しそうにしてるってことは、雅実君、寺島君のことが好きなんだと思うの。それが、恋愛なのかそれとも友愛なのかって言われたら、ビミョーなんだけど」 「なんだ、やっぱり微妙なんじゃん」 「でもね、私が見るに、雅実君のあのきょどりかたは、絶対恋愛!それに……。女の勘がそう言ってる!!」 「えーっ!結局勘なのー?」 「雅人、女の勘をなめたらいけないわよ!」 「そうね。美術の授業もなめないでほしいかな」 「「えっ!?」」 俺とももチャンは、ゆっくりと顔を後ろに向ける。 「なんだか楽しそうにお話ししてたみたいだけど。ふたりとも、放課後、美術室に来てね!」 「「は、はい…」」 にっこり笑った美術の田中てぃーちゃーに、俺とももチャンは若干の恐怖を感じ頷いた。

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