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第19話

「何、今から寺島来んの?!」 「ち、違う、違う!!ってか、あ、危ないから、雅人!!」 「ごめん、雅実!大丈夫?!」 「うん、大丈夫」 雅美の口から出た"寺島"の名前に、動揺を隠せず、思わず揚げ物中の雅実に詰め寄ってしまった。 雅実、ごめんなさい。 でも、気になることを聞かなければ! 「もしかして、寺島のお弁当用?」 「……う、うん」 こっくりと頷く雅実。 「でも、何でまた」 努めて冷静に聞いてみた。 「あ、その……。い、いつもおかず寺島に取られて、自分の分が少なくなるから……。だったら、寺島の分も作ればいいかなぁーと思って……」 そう言いながら、いまだトンカツを揚げる雅実。 「も、もちろん、おかずだけな!」 そりゃそうだろ。 あんな大食漢に、米まで詰めたら、俺たちの食べる分がなくなる。 「そ、それに、こないだコ〇トコで、安くて、つい豚バラ大量買いしたから…使わないとさ」 そっか……。 こないだの大量買い。安くて買ったんじゃなくて、寺島用に買ったんだな。 「……今回だけなんだろ?」 「え?」 「今度の土日、試合だろ?寺島」 今日のトンカツは、 「寺島、喜ぶだろうな。毎回、雅実のお弁当羨ましがってるから」 ミルフィーユトンカツが大好きな俺のためじゃなくて、試合に出る寺島のためなんだろ? 「……うん。そうだと良いけど」 「そうに、決まってるだろ。だって、雅実の作るご飯は世界一美味いんだから!!」 「ハハッ、雅人それは言い過ぎ!」 揚げ物をしてて熱いからか、はたまた、寺島を思ってなのか……。 すこし顔を赤らめて笑う雅実。 「そんなことないって!マジでっ!」 「ありがと、雅人。じゃあ、サラダ持ってって」 「ん"ー」 サラダとドレッシングをテーブルに運びながら、横目で雅実を見る。 揚げ終わったトンカツを盛り付けてる雅実。 そして、大量の盛り付けてないトンカツを見て、嬉しそうに笑う雅実。 寺島、雅実の料理が食べれるお前は幸せ者だよ。

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