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第21話
3限目辺りから雲行きが怪しくなり、お昼休みには雨が振り出していた。
「……雨、降ったね」
「……うん」
「今日の天気予報、晴れだったのになぁ。俺、傘持ってきてないわ」
やっぱり、俺が早起きとか妙なことしたからかなぁ。
ごめんよ、寺島。
雅実のクラスでお弁当を広げる俺たち。
いつものように雅実の横に席をくっつけ、つまみ食いする気満々で雅実のおかずを確認する寺島。
「ん、今日はトンカツ!?」
「う、うん……」
「美味そうだな!」
何故かまごまごしてる雅実。
ったく……。
「雅実、寺島の分は?」
「え?」
「朝、用意してたろ?まさか、持ってくるの忘れた?」
お節介かな。
でも、雅実、言い出せない感じがしたからさ。
「い、いや……持ってきたよ」
手提げから、おずおずと別の包みを出す雅実。
そうそう、ちゃんと出さないと。
折角、寺島のために用意したんだろ。
「え、それ、俺の分?」
少しビックリした顔で、雅実が出した包みを指差した寺島。
それに対し、"うん"と控えめに頷く雅実。
「寺島が、いつも雅実のおかず取ってるから、雅実が別に用意したんだよ」
「え、マジで!?」
「あ、いや、その……。たまたま、たまたま、豚バラが大量にあったから。いつも寺島におかず食べられるし、だったちょっと多めに作ろうかと思って……」
しどろもどろ、昨日俺に言ったのと同じような台詞を言いながら、寺島に包みを渡した雅実。
ま・さ・み!!
ここは"今度の試合に勝って欲しいから、寺島のためにトンカツ作ったよ♡"ぐらい言わないと!!
「開けてい?」
「ど、どうぞどうぞ」
寺島が包みを開けると、大きめなタッパーが2つ。
雅実のことだから、寺島に気を使わせないように、敢えていつも寺島がお弁当用に持ってくるタッパーと同じような入れ物を選んだんだろうなぁ。
「うわー……、美味そう……」
タッパーの蓋を開けて、こぼれるように呟いた寺島。
トンカツと玉子焼きが入ってるタッパーと、サラダメインのタッパー。
「と、トンカツだけだと、脂っこいかと思って…」
「……」
「野菜もつけてみたんだけど…」
「……」
オイ、寺島!何か言えよ!
もっとちゃんと反応しろよ!
雅実が心配そうにしてるだろ!!
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