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第29話
圧倒的に強かった寺島。
結局、番狂わせもなく、寺島が優勝。
表彰式では当たり前の顔で賞状を受け取っていた。
「寺島君、ホント凄かったね」
「んー、認めるしかないな」
「何、その上から目線」
だって、俺としては全然面白くねーし。
少しぐらい危ない試合とかあってもよくね?
寺島の試合相手達には申し訳ないが、あんな安心して見れた試合、なかなかないわ。
「さて、俺たちも帰ろっか?」
閉会式も終わり、周りは帰り支度をはじめている。
「寺島君に声かけて帰んなくてもいいの?」
俺を見て……、いや、俺越しに雅実を見て言うももチャン。
ももチャン、干渉やアシスタントはしないんじゃなかったの?
「うん。明日、学校で会うし」
「え、寺島んとこ行かねーの?」
雅実、ここは会いに行くのがテッパンだろ!?
「だって、アレ見ろよ」
苦笑いの雅実が指差した方を見ると……、
「俺、あの中に入っていく勇気ないわ」
女子の集団の中にぴょこんと、いや、ニョキっと大きな頭。
「あんなの漫画の世界だけかと思ってたけど、現実であるんだね」
感心したように言うももチャン。
「……うん、コレは有名になるな」
寺島は、ファンクラブの子達とおぼしき女子に囲まれていた。
慣れているのか、ニコニコ笑いながら対応している寺島。
オイ、寺島!!
雅実が見に来てるってこと分かってんのか!?
分かってそんなだらしねー顔で女子からプレゼントとか貰ってんなら、こちとら、殴り込みに行くゾッ!!
あ、でも返り討ちにあうか?
「だから、帰ろ?」
まさみぃ~~~!!
そんな切ない顔して言うなよぉ~!!
「じゃあー、ラ〇ンだけでも送っておけば?確かに明日話せるかもだけど、今送ったら、ちゃんと見に来てくれてたんだって伝わって、寺島君も嬉しいと思うよ」
もう、ももチャン、好き!!
「……そうだね」
ももチャンに勇気づけられ(雅実本人は分かってないだろうけど)、少し明るくなった雅実は、寺島にライ〇した。
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