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第31話
慌てて俺達に駆け寄ってきた寺島。
「雅実、来てたんなら連絡くれよ」
やっぱり爽やか笑顔の寺島。
ついさっきまで試合をしていたとは思えない爽やかさ。
そして…、
「いや、集中したいかと思って…」
注目の的。
ただでさえ有名人な寺島が、大声で雅実を呼んだもんだから、周囲の目という目が俺たちに。
雅実の目も回遊魚のようだ。
「俺、そういうの無いから、気にしなくてよかったのに」
寺島。お前は、この場を気にしろ。
「とりあえず、優勝おめでとう、寺島」
地味に端に移動しつつ、寺島に賛辞を送る。
「こちらは俺のカノジョのももチャン」
俺の横にいるももチャンをジッと見ていた寺島に、ももチャンを紹介すると、
「初めまして。小森ももです。おウワサはかねがね聞いております。おめでとうございます、寺島君」
ももチャンも会釈して賛辞を送った。
「二人とも、ありがとう」
俺とももチャンにお礼を言った寺島は、今度は雅実の方をジッと見る。笑顔で。
「?」
寺島にジッと見られ、少し顔を赤くしつつもきょとんとしている雅実。
「雅実は言ってくてないの?」
「え?」
「俺、優勝したんだけど?」
「え?あっ!お、おめでとう!」
「何、その忘れてたみたいな言い方」
「え、あ、ごめん…」
慌てて謝る雅実に、ハハハッと爽やかに笑う寺島。
そんな二人を見ていると、横からちょんちょんと突かれる。
どうしたももチャン?そんな目を輝かせて?
「ねえ、コレって通常運転?」
"コレ"とは、雅実と寺島のやり取りのことだろうか?
「うん。大体いつもこんな感じ」
俺がそう言うと、ももチャンはバッと自分の口を押さえて、
「初めてナマで見たけど…何この二人…尊すぎる…」
と、感極まったようにつぶやいた。
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