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第32話
いまだ目の前でイチャイチャ(そうにしかみえない)している雅実と寺島。
周囲の目線、特に女子の目線が痛い。いい加減この場から離れたい。
「寺島はこの後どうすんの?」
とりあえず視線が遮られるトコに行こうぜ。
「俺たち、今からどっかでお茶でもしようかって話してたんだけど。お前も来る?」
「あー、俺は……」
口ごもる寺島。
すると、
「寺島!!」
今度は、寺島を呼ぶ声。
「ファンクラブの貢物貰ってすぐいなくなったから、どこ行ったのかと思えば」
剣道部員とおぼしき数人がわらわらとやってきた。
そして、俺たちを見て、
「こんなところで油売ってないで、早く行こうぜ」
なんとなーく、見下してるよーなー。
ってか、呼び止めたのは寺島だぞ。
「えーっと、打ち上げがあるんだ…」
頭を掻きながら、何となく気まずそうに答える寺島。
いや、別に先に予定があったならそれ優先だろ。
「…折角誘ってくれたのに、ごめんな」
雅実の方を見て、申し訳なさそうに謝る寺島。
誘ったの俺だけどな。
「行くぞ寺島!他の奴らも待ってんぞ!」
なおも雅実を見つめる寺島を、急かす剣道部員。
「寺島、早く行かないと。待ってるんだろ」
いたってフツーに言う雅実。
…ちょっと寺島が可哀想になってきた。
「じゃ、じゃあまた明日な」
「ああ、また明日。打ち上げ楽しんでこいよ!」
名残惜しそうに手を振る寺島と、笑顔で手を振り見送る雅実。
寺島、折角の雅実とのお茶(きっと俺とももチャンそっちのけ)に行けなくて、すんげー落ち込んでたな。
それに対し雅実は、俺と一緒で先約優先主義だから、お茶の誘いを断わられても、さして気にしていない。
それがまた、寺島を落ち込ませていた。
そこはぁ〜、気づけよぉ〜まさみぃ〜!
そしてぇ〜、寂しそうにしてあげろぉ〜まさみぃ〜!
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